Summer Intersection フジタカズミ
なつ
夕立のあと
アスファルトはゆだって
しろいスカートの疾走感
ほら
点滅する
あお
波が
すぐそこまで来てる
あさ
目がさめると雨が
降っていたような気がする
誰もいない交差点
誰もいない対岸
信号機も眠るって
日記に書くのはゆううつだ
白線の交叉点に座って
見ていたのは交番
誰もいないくせに
ランプの赤はついている
思い出したけれど
きょだいヴィジョンは
なぜか
ガラスみたいに
光って
海だか空だかを映していた
エメラルド色の群像
こめかみをつたう 2017年のゆうだち 波打ちぎわに白線がゆれている 幾億の音がうねる 真夏のゆうれい
ねえ ぼくたちの代弁者になりたいなら 拡声器はすてて 一直線のクラクション あらいざらしたシャツのしろみたいな 世界をよくする方法 伝言ゲームみたいに あたえてくれればいいのに 交差点のむこう サボテンの花の赤くゆるやかに 走りぬけるトラック たえまなくひろがる あのざわめきの名前は
うみ
つま先にふれた
水滴が
ひかる
声
きみの
声は
たとえば
トビウオのとうめいなつばさが
はじめて風をうける
その
のびやかなひろがり
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