海月たち 山田章人
真っ黒い空、
そこから次々に投下される様々な色。
赤、黄、緑、白、そして鮮烈な青。
滲み出す青は風景と混ざり合い、
複雑な模様を作り出して地上に鎮座する。
濃淡の青に照らされた交差点は暗い海で、人々はそこを漂う小さな海月。
光の波に身を委ね、無数の海月たちは思い思いにゆらゆらと漂っている。
其々の頭上で響く音。
視線を上げる、
点滅はいつまでも終わらない。
明暗の落差に思わず瞬いて私は立ち尽くしたまま。
空だけは相変わらず黒い。
延々と同じフレーズを繰り返す断片。
循環する輪の中、次第に数が増えていく。
どんどん強度を増していく音像。
チリチリとする脳味噌。
時間の概念を飛び越える感覚。
無責任な他人の怒号。
永遠は目の前で鳴らされている。
心地の良かった音圧はとうに通り過ぎた。
劈く様な煩さがこの場を支配している。
あまりの音量に耳を塞ぐも、
波は指の隙間から入り込んできて、容赦無く聴覚を痛めつける。
景色がぐらぐらして、上下左右の空間が曖昧だ。
真っ直ぐ立っていられなくなりそうだ!
ヒリついた気持ちだけがどんどん肥大して、
その場に泣き崩れる。
嗚咽を上げながら狂ったように揺れている、
私は小さな海月。
終わらない狂気の海に包まれて、
逃げ場なく右往左往する海月たち。
やがて一切は繰り返す轟音の渦に溶けていく。
私は何も考えられなくなり、深い海の底へと落ちていった。