Оへの巡礼 オーヘノジュンレイ 尾々前吾峰
Оへの巡礼
あの日、あなたを探しに行きました。
何故私を見つけてくれなかったのですか?
あなたに見つけてもらえたら、
私はこの世でただ一人特別な
偉大な人間になれたのです。
一度だけ、
一度だけでも君に会いたかった。
まるであの緑の絵の中にある
十字の交差点を行き交う人々。
名も知らない人が通り過ぎる。
名もない私が通り過ぎる。
けたたましい自由と
うす狂いの白線の上を、
あなたに見つけられたい気持ちで渡る。
あたたかい息を吐く都の影に
あなたは十年の空間になって現れる。
いっそ私の魂すら鎖でつなぎ、
とりこにしてくれればよかったものを。
18才――巡礼を終えた後に立ちよった大きな交差点
笑い声 標識 冷たい風 ふるえ アスファルト 笑い声 眼鏡の男
悲しみ 手さげ袋 ビルジング 肌色のコート 明るい靴
警備員 電柱 窓ガラス クラクション 鳥の声 行くあてのない私
夢 晴れた空 灰色の空気 うつむいた目 スーツ 知らない人
あきらめ そよ風 白線 犬 サングラス 汚れた上着 笑い声
時計 信号機 足音 車 白衣の女性 植えこみ 吸いがら
黄色い手袋 18才 かすれる上着 話し声 看板広告
車 早足 無情 分からない方角 あなたの手 嘘
スピーカー 音楽 ベルト 笑い声 ゆれる髪 3月
にぶい太陽 ハンドタオル サイフ 恋 帽子 ぼうっとした目
センチメンタル リュックの中の本 憧れ 笑い声 希望
新月の夜――28才
月の出ない夜に
私は一度だけ
神になろうとしました
新月の暗がりで
秘密の言葉を唱え
私は神になろうとしてしまいました
結局私は神にはなれず
ぽろぽろこぼれる涙をふきながら
今こうやって人間をしています
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