あ、自分は女だったんだ
―あんまさんは現在女性として生活していますが、以前は違ったんですよね。
(あんまゆきさん 以下A)そう、私はこの間45歳になったところなんだけど、女性になったのは38歳の時なのね。だから38年間はずっと男性として生きてきました。
―男性としての生活が長かったんですね。子どもの頃から自分の性別に違和感はあったんですか?
A よく性同一性障害の人で、小さい頃から自分が反対の性別だと思っていた、っていう話はあるんですけど、私はそういう印象はあんまりなくって。男の子の遊びもしてたし、女の子が持ってるお人形が欲しいっていうような気持ちもあったし。別に性同一性障害じゃなくてもね、小さいうちには普通にある経験なので、その範囲のことだなあとは思ってたんですね。
ただ、小学校2年生の体育の時間に、一度だけ姉の体操服を着たことがあるんです。私のものが洗濯して乾いてなくて、母親がお姉ちゃんの持って行きな、って。男女ほぼ同じデザインだったんだけど、男の子は腰のところに水色のラベルが付いていて、女の子はピンク色。それがすごく嬉しくって、学校から帰ってきてもずーっと着替えなかった。
ただ、小学校2年生の体育の時間に、一度だけ姉の体操服を着たことがあるんです。私のものが洗濯して乾いてなくて、母親がお姉ちゃんの持って行きな、って。男女ほぼ同じデザインだったんだけど、男の子は腰のところに水色のラベルが付いていて、女の子はピンク色。それがすごく嬉しくって、学校から帰ってきてもずーっと着替えなかった。
―小学生の時のその記憶が、あんまさんにとって最初の思い当たる節だったんですね。思春期の頃はどうでしたか?
A 中学校に上がると、当時男子は丸坊主だったんです。それももちろん嫌だったんだけど、中学校って色々なところで男女がすごく分かれちゃうじゃないですか?制服とかね。それがすごく嫌で。やっぱり女性の服装をしたいっていうのを、その時くらいからすごく思うようになったかなぁ。
―実際に女性の服を着ることも?
A たまに家に誰もいない時にお姉ちゃんの服をこっそり着たり。そういうことをしていた中学生時代、みたいな感じでしたね。高校生になると、結構レディースの服を着てたかな。身体が細くてメンズの一番小さい物でもズボンなんかはゆるかったので。まあそんな言い訳をしながら、本当はそれを履きたいから履いてたんだけど(笑)
―恋愛対象は女性ですね。
A そう、昔から女の子が好き。幼稚園の時も女の先生が好き、みたいな感じで。これが男の人が気になるって風だとまたそこで別の違和感を感じると思うんだけど、そういうのはなかったので。だから「人に言えない趣味がある。なんでだろう、やめなくちゃ」って感じでずっと思ってきたかな。
大学生になって一人暮らしをするようになると下着もレディースを集めるようになったんたけど、やっぱり女の子が好きだから、彼女なんかもできるじゃないですか?そうするとね、一応何かあってもなくても、デートの時はメンズの下着を着けて(笑)でもある時同棲しようって話になったんですよ。さすがに下着は捨てたんだけど、やっぱりメンズの下着は残念な気持ちがするので、「よし、もう彼女に言おう!」と思って。
大学生になって一人暮らしをするようになると下着もレディースを集めるようになったんたけど、やっぱり女の子が好きだから、彼女なんかもできるじゃないですか?そうするとね、一応何かあってもなくても、デートの時はメンズの下着を着けて(笑)でもある時同棲しようって話になったんですよ。さすがに下着は捨てたんだけど、やっぱりメンズの下着は残念な気持ちがするので、「よし、もう彼女に言おう!」と思って。
―それまで彼女には一度も言ってなかったんですか?
A 言ってない。でもその子だったら多分受け入れてくれるかなー、という気がしたんで、レディースの下着を身に着けたまま、車の中で「実はこういうの履いてるんだよね」って見せたんです。すごく笑われたんだけど、「あぁ、そういうの好きなんだ」って感じで結構OKだったんで、一安心で。それが初めてのカミングアウトかな。
―女性の服を着る、というところから、実際に女性として生活するようになったきっかけはなんですか?
A 30代になって、社会的には男性っていうと貫録が求められる年代じゃないですか。地域の付き合いなんかがきつかったですね。田舎のおじさん達と一緒の飲み会があると、自分もそういうおじさんの一員っていうのが、なんかすごく嫌で、違和感が強くなってきて。
2003年に性同一性障害特例法 っていう戸籍の性別を変えられる法律ができて、世の中でも性同一性障害が話題になった時に、「あぁ、世の中にはこういう人もいるんだ」って思って。
その時は「自分もそうかもしれない」っていうところまで確信は持たなかったんだけど、でもこうやって自由にしている人もいるんだから、自分も服装とか自由にして良いんじゃないか、それまではすごく恥ずかしいこと、いけないことって思ってたけど、良いんじゃないか、って思い出して。好きなレディースの服を、もう「着よう!」と思って着るようになって。
2003年に性同一性障害特例法 っていう戸籍の性別を変えられる法律ができて、世の中でも性同一性障害が話題になった時に、「あぁ、世の中にはこういう人もいるんだ」って思って。
その時は「自分もそうかもしれない」っていうところまで確信は持たなかったんだけど、でもこうやって自由にしている人もいるんだから、自分も服装とか自由にして良いんじゃないか、それまではすごく恥ずかしいこと、いけないことって思ってたけど、良いんじゃないか、って思い出して。好きなレディースの服を、もう「着よう!」と思って着るようになって。
―性同一性障害がどうこうという話ではなく、好きなようにしようと思ったんですね。
A ある時、インターネットで見つけた性同一性障害のグループの会合に行ってみたのね。MtF
の人が多かったかな。体験が共通する方もいて、そうだそうだ、きっとこれは自分も性同一性障害かもって。
―同じような体験をされている方と会って、自分もそうかもしれない、と。
A その時に、精神科に行って診断をもらえるよって話を聞いて、専門で見てくれる浜松の病院に行ったのね。そこで先生と話をしているうちに、自分は心は女性だったんだっていう風に気付く瞬間があって。
それまでは、心に男とか女とか無いんじゃないか、別に男とか女とかこだわらなくてもいいんじゃないかって思ってたんだけど、逆にそうすると、なんで自分が女性らしくしたいのかっていう説明がつかなくって、もやもやして葛藤してたんだけど。あーそうかって。
別に男らしさ、女らしさってこととは別の次元で、やっぱり体も男の体と女の体って違うんだから、心って言っても結局脳な訳で、脳に男性の脳と女性の脳ってことで違いがあっても良いんじゃないかって。こだわりも抜けて、あ、そっか、自分は女だったんだって思って、そう思ったら凄く自然な感じがしてきちゃって。色々今までおかしいなって思ってたことが、そっか自分は女だったから女のようにしたかったんだって、なんかすごく善良な市民になった気がして(笑)これでいいやって思ったのね。
それまでは、心に男とか女とか無いんじゃないか、別に男とか女とかこだわらなくてもいいんじゃないかって思ってたんだけど、逆にそうすると、なんで自分が女性らしくしたいのかっていう説明がつかなくって、もやもやして葛藤してたんだけど。あーそうかって。
別に男らしさ、女らしさってこととは別の次元で、やっぱり体も男の体と女の体って違うんだから、心って言っても結局脳な訳で、脳に男性の脳と女性の脳ってことで違いがあっても良いんじゃないかって。こだわりも抜けて、あ、そっか、自分は女だったんだって思って、そう思ったら凄く自然な感じがしてきちゃって。色々今までおかしいなって思ってたことが、そっか自分は女だったから女のようにしたかったんだって、なんかすごく善良な市民になった気がして(笑)これでいいやって思ったのね。
―今までは、例えばレディースの服を着ることを変わった趣味という風にしか捉えていなかったけれど、自分は女性なんだってことで色々としっくりきたんですね。
A 私はすごく単純で嫌なことを仕方なくするってことが本当に出来ない人なので、「よし!」って自分の中で解決したら、即これから女性になろうって思ったの。
―具体的にどうしたんですか?
A 職場での服装を冬場でもノーネクタイにしたり、スーツのパンツだけレディースにしたり、ちょっとずつ変えて。
それで、「誰かに言おう!」ってことで一番親しくしてた上司にカミングアウトして、すごくビックリされたけど、別にいいんじゃないって言われてOK。次にまた別の人にも言って、15人くらいの部署だったんだけど半分くらいの人に順番に言っていってね。
残りの人には、会議の時に自分は性同一性障害で、これから女性として生きていきたいと思いますって話したの。名刺の名前も「ゆき」で作って下さいって。それで女性として働き出したの。市役所に議員の控え室みたいなところがあってそこで議員の秘書なような仕事をやってたんだけど、その面ではすごく良い職場でしたね。
それで、「誰かに言おう!」ってことで一番親しくしてた上司にカミングアウトして、すごくビックリされたけど、別にいいんじゃないって言われてOK。次にまた別の人にも言って、15人くらいの部署だったんだけど半分くらいの人に順番に言っていってね。
残りの人には、会議の時に自分は性同一性障害で、これから女性として生きていきたいと思いますって話したの。名刺の名前も「ゆき」で作って下さいって。それで女性として働き出したの。市役所に議員の控え室みたいなところがあってそこで議員の秘書なような仕事をやってたんだけど、その面ではすごく良い職場でしたね。
―自身の身体についてはどう思っていましたか?
A 特に二十歳くらいの頃は、やっぱり女性的な体形になりたいっていうのはすごく思ったかな。恥ずかしい話なんだけど、ヒップが欲しいからズボンにタオル詰めたりして(笑)
でも、自分の性器に対する違和感とか取っちゃいたいっていう気持ちは今も昔もあんまり無いかな。世間体的には困るけど、大浴場になかなか行けないとか。そういう生活の面では困るし、オペ してしまえば戸籍も女性に変えられるんだけど、自身の問題として付いてるものそのものが嫌かっていうと別にそういうところまでは思わなくて。そこは人それぞれなんだけど、それよりもやっぱり名前を変えられたのが一番嬉しかったな。戸籍上の名前も変えられるので変えて、免許証なんかも変えて。社会的に女性として扱われたいっていうのが強いかな。
逆のパターンの人もいるけど。職業上仕方なく男性をやっているけど手術はしている人。身体の方に違和感があるタイプと、社会生活の方に違和感があるタイプの人がいるので。
でも、自分の性器に対する違和感とか取っちゃいたいっていう気持ちは今も昔もあんまり無いかな。世間体的には困るけど、大浴場になかなか行けないとか。そういう生活の面では困るし、オペ してしまえば戸籍も女性に変えられるんだけど、自身の問題として付いてるものそのものが嫌かっていうと別にそういうところまでは思わなくて。そこは人それぞれなんだけど、それよりもやっぱり名前を変えられたのが一番嬉しかったな。戸籍上の名前も変えられるので変えて、免許証なんかも変えて。社会的に女性として扱われたいっていうのが強いかな。
逆のパターンの人もいるけど。職業上仕方なく男性をやっているけど手術はしている人。身体の方に違和感があるタイプと、社会生活の方に違和感があるタイプの人がいるので。
―奥さんとはどうやって出会ったんですか?あんまさんのようにMtFで同性愛者の人の中には、パートナーを見つけるのが難しいと感じる人もいると聞きますが。
A パートナーは欲しいから結構頑張りましたね。7年前にトランス
ある時FtM の友達に連れられてビアンバーに行ったのね。そこで知ったクラブイベントにしばらくして行ったんだけど、クラブとかすごく好きだから、楽しくって。ビアン の女の子に「お姉さんお酒飲みますか?」って奢ってもらったりして、男の人からナンパされて女扱いされるのもいい気持ちだけど、女の子が好きな女の子から声掛けられるって、私めっちゃ女子じゃん、って感じがして(笑)こっちの方が絶対いいって思って、その後も結構ビアン業界が多いですね。
して、最初しばらくは男もいいかなって思ったんだけど。自分は女だから男の人と付き合わなくちゃって。でもやっぱり嫌だなって。ある時FtM の友達に連れられてビアンバーに行ったのね。そこで知ったクラブイベントにしばらくして行ったんだけど、クラブとかすごく好きだから、楽しくって。ビアン の女の子に「お姉さんお酒飲みますか?」って奢ってもらったりして、男の人からナンパされて女扱いされるのもいい気持ちだけど、女の子が好きな女の子から声掛けられるって、私めっちゃ女子じゃん、って感じがして(笑)こっちの方が絶対いいって思って、その後も結構ビアン業界が多いですね。
―こういうタイプの人がいい、というのはありました?
A 私は結構女子って感じだったからできればボーイッシュ
な子がいいなっていうのが最初はすごくあったんだけど、ボーイッシュな子は可愛い子が好きだし、タチの子が多いからその分MtFへの攻め方が分からないっていう子も多くて、対象外って感じでね。だから多分MtFの人たちはフェム 狙いの方がいいと思うな。イベントなんかいくと背も高いし、フェムの子からなんとなく声掛けてきますね。―出会いはありましたか?
A 一回FtMの子と半年間だけ付き合ったんだけど、私はどうしてもボーイッシュな女子っていう風に見ちゃって、でも向こうからしたら自分は男だっていうところだからちょっと違うってなって別れましたね。その後少し気になった子がいて、ノンケ
この落ち込みを脱するには他に好きな人を見つけなくちゃと思って、当時はまだmixiが流行ってたからビアンの彼女募集みたいなコミュの掲示板を見たの。そこに最初に書いてあったのが今のパートナーで、「背が高くてフェムな年上のお姉さん希望」みたいなことが書いてあって、これはもう私にぴったりじゃないって(笑)
の子だったんだけどまあいいかなーって向こうもなったんだけど、結局うまくいかなくてすごくショックで落ち込んでしまって。この落ち込みを脱するには他に好きな人を見つけなくちゃと思って、当時はまだmixiが流行ってたからビアンの彼女募集みたいなコミュの掲示板を見たの。そこに最初に書いてあったのが今のパートナーで、「背が高くてフェムな年上のお姉さん希望」みたいなことが書いてあって、これはもう私にぴったりじゃないって(笑)
―運命の出会いですね(笑)
A ご飯食べに行って、その時にMtFなんだよって話をしたらちょっとびっくりはしたみたいだけど、ふーんって感じで。面白い子だなって思いましたね。それから何度か会って付き合うことになりました。だからMtFの人も諦めずに頑張ったら大丈夫です。あんまり「こういう人がいい」って決めつけずに、柔軟にしていくといいんだと思いますね。