anomura

すてきな声に、会いにいこう
Illustrated by © 2017 タジマ粒子 / TAJIMA PARTICLE
interview - 日本, 愛知県, 名古屋市, Queer+s

Introduction
あなたの周りに、ゲイはいるだろうか。あるいはレズビアンは。もしくは性別を変えたいと望む人は? 「いない」と答えた人へ。 こうしたセクシュアルマイノリティ(性的少数者)は、日本人の20人に1人いると言われている。 バラエティ番組の中、新宿2丁目の中だけにではない。学校のクラスに、職場に、行きつけの店に、あなたの周りに確実に存在するのだ。 何故彼らの姿は見えないのか。何故彼らは「いない」ことにされているのか。 もう一つ質問を投げかけたい。―あなたは彼らをどういう眼差しで見るだろうか。 2015年春、名古屋市政へ挑戦する一人の人物がいる。男性から女性へとトランス(越境)した、あんまゆきさん。あんまさんが、今また越えたい壁がある。 それぞれの答えを胸に、彼女の語る言葉に耳を傾けたい。
Interviewee profile
あんまゆき

愛知県豊田市生まれ。名古屋市在住。
性同一性障害をカミングアウトし、男性から女性へと性を移行して生活をはじめる。
戸籍は男性のまま女性と結婚し、同性愛カップルとして暮らす。
名古屋市立大学非常勤講師。NPO法人PROUD LIFE代表理事。ミックスダイニングバーQueer+sオーナー。
2015年4月の名古屋市議会議員選挙へ出馬予定。
虹色なごや あんまゆきのサイト

ゼロからの発進と発信―名古屋初 LGBTのNPO法人設立へ―

―どうしてお店を始めようと思ったんですか?
A きっかけはね、日本ってLBGTの活動が海外と比べると圧倒的に弱いんだよね。パレード(※1)も、名古屋で今度やりますけど、東京でも来る人が1万人、パレードに参加するのは2千人くらい。それでも規模は大きい方なんだけど、隣の台湾でいうと5万人のパレード、シドニーだと何十万人、ニューヨークになると100万人ぐらいが集まる。
そういうのと比べると、運動とか発信をして行く側の主体がすごく少ないって思うんだよね。世の中の偏見とか制度とかそういう社会的な要因ももちろんあるんだけど、海外にも偏見はあるし、アメリカなんかは宗教上の理由もあるから同性愛に対してむしろすごく否定的な考えの人たちもいっぱいいる。そういう状況で日本はそこまで否定も無いしあんまり肯定も無いって感じで、どっちがいい悪いって言えないけど、明らかに運動する側の発信力は違いますね。
―基本的に隠してるっていう印象があります。
A そうね、隠してるし、これはLGBTに限らず他の社会運動もそうだと思うんだけど、ヨーロッパの方だと何かちょっとあるとデモがあるけど、日本も今は原発のことで少し若い人たちも動き出してはいるけど、やっぱり圧倒的に弱い。
特にLGBTのことに関しては人口の4~5%いるって言われてるんだけど、マイノリティーで他に同じ割合で何があるかって言ったら、例えば障がい者。精神、身体を含めて障害者手帳を持ってる人たちも5%位いるって言われてるんだけど、団体とか運動、社会的資源がLGBTとは全然違うじゃない?制度はもちろん、サービスもあるし。
LGBTは10人、20人くらいのグループが全国にポツポツっとありますくらいの話で、日本の現状を変えるためにはそこを突破しないと変えられないと思うんだよね。特に名古屋はNPO法人としてそういう活動をしているところが本当にひとつも無かったし。
―それでこの現状をどうにかしようと。
A 名古屋に風間先生(※2)っていう90年代の最初からずっとゲイの運動をやっている方がいるんだけど、クィア学会(※3)っていう団体のLGBTの研究者と活動家が集まる大会が2010年に風間さんがいる中京大学で開かれたのね。その時に全国から結構人が集まったんだけど、東京とか大阪にはいっぱい団体があるのに、名古屋は風間さんがいるくらいでほんとにない、ちょっとこれはなんとかしなくちゃって。そしたら知り合いの先生に、名古屋がこんなに遅れているのは、あんまさんみたいな人が今まで出てこなかったからだよ、って言われて。私はすごく調子に乗るタイプなので、じゃあ私やろうって(笑)
―それでNPO法人PROUD LIFE(※4)を立ち上げたんですね。
A それまでもGID(=性同一性障害)のグループは作ってたんだけど、もうちょっとちゃんとしたものを立ち上げようと思って。ちょうど名古屋市議会の解散もあったので、それを機に仕事を辞めて、しばらく失業保険を貰いながら活動準備をして。
最初にPROUD LIFEの事務所の場所を探したんだけど、事務所をやっても家賃が出ていくだけだし、じゃあお店にしようかってつくったのがQueer+sの経緯。だからお店やりたいっていう気持ちはもとから全然無かったんだけど、まあ開いて、活動っていうとハードルが高いけどお店だと気軽に人も集まってくるしってことで。
―ビアンバーのLUCE(※5)はどうして開いたんですか?
A Queer+sはトランス系の人が多いんだけど、私はどっちかっていうとセクシュアリティも女性なのでレズビアンの友達が多くてたくさん来てくれたんだけど、私が色々社会活動をやっているのでノンケの方もいっぱいみえてわけがわからなくなってきて。じゃあビアンバーをいっこつくろう、ってことでつくったって感じかな。
―お店の名前はどういった経緯で付けたんでしょう。
A  Queer+sはクィア(※6) +ストレート(※7) 。ストレートもいいよって。
LUCEはパートナーが付けたんだけど、レズビアンのLが付く言葉でなんかいい言葉ないかなって探して。luceってイタリア語で光って意味なんだけど、イメージに合うじゃないってことで名付けたかな。
―今後お店をこういう風にしていきたいという展望はありますか?
A 私としてはビアンの子とMtFがお友達になれる場所はもうちょっとあった方がいいなと思ってますね。
―MtFの人は入れないお店って結構ありますよね。
A そうね。実際は入れないって言ってるとこでも入れたりするけど、オッケーってなると際限がなくなるので、お店的にも難しいよね。
例えばLUCEは全然どんな人でも大丈夫だし、みんなが来やすい場所がいいかなっていうのと、どうしてもまだ名古屋だったら女子大小路(※8)っていう空間の中だけで自分を解放できるって人が多くって。それはそれで必要なことだし大事な場所なんだけど、同時に24時間自分をオープンにしていられた方がいいなって。そういう点で言うと、ここは女子大からはひとつエリアが外れてるので、外と繋がれるっていうか。自分がセクシャルマイノリティであるっていうことはセクシャルマイノリティの人にしか言ったことがなかった人が、他のお客さんも来るところで、あ、意外とノンケの人も偏見ないんだって。そんなことを実感できたりだとか、広がる場所になるといいなと思います。
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Queer+s入口

Queer+s入口

(※1)パレード
2012年10月、フランス・マルセイユ。同性婚反対デモの前で堂々と口づけする女性2人

2012年10月、フランス・マルセイユ。同性婚反対デモの前で堂々と口づけする女性2人

(※2)風間孝
中京大学 国際教養学部教授。
(※3)クィア学会
2007年10月発足。
Queer+s店内

Queer+s店内

LGBTへの理解を広げ、社会と繋がり、他の社会的運動との連帯を目的とする。名古屋、東海地域で活動。
(※5)LUCE
名古屋市中区栄にあるビアンミックスバー。

(※6)クィア

元は英語で差別的に使われる「オカマ」「ホモ」「変態」の意。最近は当事者がポジティブに自称する言葉として使われている。

(※7)ストレート

ノンケに同じ。

(※8)女子大小路

名古屋市の歓楽街、中区栄四丁目一帯を指す名称。一帯には居酒屋はじめスナック、ホストクラブ、風俗店、音楽クラブ、外国人パブなどが密集しており、なかでもゲイバー/ビアンバーの店数は「中部一」ともいわれるほどの賑わいをみせている。
Queer+sカウンター

Queer+sカウンター

Place info:
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Queer+s
2012年 OPEN
セクシュアルマイノリティもストレートも入れるミックスダイニングバーとして営業中
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