街道から歩いてたった三分。
天然記念物指定のシダ群落をかくしている伊尾木洞。
そこには、手でふれることのできる、静かな絶景がまちうけていました。
天然記念物指定のシダ群落をかくしている伊尾木洞。
そこには、手でふれることのできる、静かな絶景がまちうけていました。
なにげない風景のなかに
観光客用にかまえられている伊尾木公民館の駐車場から、左手にでるとすぐ、なんの変哲もない民家の間にゆったりと小川が流れています。田舎ならばどこにでもありそうな、その底の浅い小川の奥に伊尾木洞の入り口はありました。列車が一台、どうにか通り抜けそうなほどの洞穴のそばまで近づいてみると、ひんやりと冷気があふれてきています。かすかに、胸が泡立ってくる心地でした。
静寂におおわれた緑のコンサートホール
水のしたたり落ちる洞窟をぬけると〝時空をこえる〟といってはすこし大袈裟でしょうか。
やわらかい木漏れ日が頭上高くからふりそそぎ、シダとコケにおおわれた天然の壁(貝の化石などが埋まっている地層の壁!)が、波のようにうねりながら広がっていくのです。まだ周辺が海だった頃に浸食されてできた伊尾木洞は、原生植物の息づかいや足元を流れている水のせいか、今でもしっとりとした空気がたちこめていました。
そこでは、近くを走っている車の騒音などもかき消されてしまい、まるで遥か昔の時代にうっかり踏み込んでしまったように、ついさっきまで眺めてきた街並みの残像までもがたちまち鳴りをひそめてしまうのです。かわりに、ゆっくりと感動がひろがっていきます。静かすぎる幽玄な空間に呑み込まれてしまいます。
体験することがすべて
水は絶えず流れており、足元の悪い道がずっと続きます。スニーカーか、もしくは長靴を履いていきましょう。夏場はマムシが出没するらしいので、必ず長ズボンを着用した上でおとずれましょう。そして、現地における植物や化石の採取、また地層を傷つける行為などは禁じられております。観光客としてのマナーを守れる人だけがおとずれるようにしましょう。