550坪の敷地に30年以上をかけ、たった二人(沢田嘉農さんとその妻、沢田裕江さん)の手で築きあげられたマンションがある。その名も【沢田マンション】、高知市薊野北町にそびえる小山を背にした白亜の建物は、風変りな外観と常識はずれの構造をしたマンションで、建築マニアだけでなくたまたま通りがかった人の目すらも釘付けにさせる不思議な建物だ。休日には住民以外の人たちも足を運んでおり、今では知る人ぞ知る、高知の魅力的な観光スポットともなっている。
マンションらしからぬ建て構え
マンション敷地の入り口にやってくると、さっそく、見慣れない重厚な発電機たちに迎えられる。その向こうには大きな吹き抜けのリフトがあり、さらにその奥ではなだらかなスロープがマンション内部へするするとのびていく……一階にはカフェやギャラリーなども並んでおり、足を踏み入れるほどにマンションらしさが薄れていくのだが、上階を見上げると、ベランダに洗濯物が干されていたり、たくさんの電線が縦横に走っており、いかにもマンションらしい生活感が漂っている。たしかにマンションであることに違いないが、すでに入り口から、今までのマンションに対する固定観念が大きく揺り動かされてしまった。
たったひとつとして同じ部屋はない
なだらかなスロープを歩いて二階にあがると、セメントの床と白塗りの壁に囲まれた通路がのびている。当然、そこには人が住むための部屋がならんでいるのだが、なんと、部屋ごとに玄関の扉が違っているのだ。これも、沢田マンションの大きな魅力のひとつなのであるが、実のところ、扉だけでなく部屋そのものがひとつとして同じものはないのである。すべてが違う造りの部屋となっているのだ。
常識はずれの大家宅
五階からは沢田家のフロアとなり、大家である沢田裕江さんの自宅があるのだが、このフロアには池もある。沢田夫妻の子供や孫たちのために作ったらしく、当初はプールにする計画があったそうだ。そして、屋上へ進む階段の途中から見えてくる、頭上で空をつくようにのびているクレーンは圧巻だ。いまだになお残っているクレーンは、家主が自力で築きあげてきたという証としていかにもふさわしい、力強いシンボルである(ちなみに、このクレーンすらも自家製なのだ!)。屋上には鳥小屋や畑があり、昔は田んぼもかまえられていたというから驚きである。
驚きだらけの見学を終えて
見学を終えたあと、帰り道に降りていく手作りのスロープに対し、うっすらと名残惜しさをおぼえてしまう人も少なくないだろう。常識や規格にとらわれない自由なマンション造りは、どこか親しみを感じさせながら〝住む〟ということの喜びと楽しみを教えてくれているような気がした。
長期間の契約だけでなく、ウィークリーマンションや一日だけの宿泊もやっている。ぜひいちど、高知に訪れた際は「沢田マンション」へ泊まってみてはいかがだろうか。
長期間の契約だけでなく、ウィークリーマンションや一日だけの宿泊もやっている。ぜひいちど、高知に訪れた際は「沢田マンション」へ泊まってみてはいかがだろうか。