anomura

すてきな声に、会いにいこう
Illustrated by © 2017 タジマ粒子 / TAJIMA PARTICLE
interview - 日本, 大阪府, 大阪市, アオツキ書房

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Introduction
花から花へ、蜜を集める蜜蜂のように。 あれも、これもと、棚から棚へ手が伸びる。 1冊抜き取って、ページをめくり、戻し、また抜き取り……。 目の前に広がる魅惑的な本の海。その1冊1冊に綴じられた世界に溺れる。 ソビエトの絵本、昭和の幻想文学、フランス映画のポスター、妖怪漫画……。 古本屋、それは人から人へ渡り歩いてきた本が漂着する場所。 今回読むのは、そこに魅せられた一人の男の物語。 永遠に広がり続ける本の海を泳ぐ男の、現在進行形の物語。
Interviewee profile
金本武志

1980年、大阪市浪速区日本橋生まれ。日本橋育ち。日本橋在住。
2008年、日本橋に音楽・映画・美術・絵本・サブカルチャー・文芸等のジャンルの本に加え、CD/レコードも取り扱う古本屋、アオツキ書房をオープン。
2014年に西区北堀江に移転。
鳴カズ飛バズのまま今にいたる。
この先どうしていいかわからない。

書房の在り方

―仕入れはどうやってされてるんですか?
K 買い取りです。お店やる前は新刊の本屋でバイトしてて、1~2年くらいの間にお店をやる前提で割と意識して古本を集めて。ある程度数がまとまったかなと思って始めたんですけど、やっぱり全然足りなかったです。
―どのくらい集めたんですか?
K 冊数はちょっとわからないですけど……結構数がいるんやなと。今もそうですけどジャンルが狭いんで、お客さんがあらかじめ「こういうのがいいだろう」と持ってきてくれたりしてちょっとずつ増えていきましたね。
―買い取りリストにある物は金本さんの趣味ですか?
K 趣味というか、参考にして下さいくらいの感じです。自分の趣味以外のもんもいっぱい入ってます。
―絵本も置かれてるんですね。
取り扱うジャンルは音楽、映画、美術、漫画、文芸等々。

取り扱うジャンルは音楽、映画、美術、漫画、文芸等々。

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K 絵本は別に子どもの時からどうっていうことはなくて、大人になってから古本屋でたまたま世界の絵本作家、チェコとかロシアとか東ヨーロッパの作家を紹介した本を読んだんですよ。高校時代はデザイン関係の学科やったんですけど、その本を見て絵本て結構面白いなと。
―買い取りの際の査定の基準はなんですか?
K 厳格なもんはないですけど、よっぽど値打ちのあるやつ以外は定価の半額くらいですね。出版年数とかにもよりますけど。今はネットがあるから自分の範囲外の物も値段を調べられるんですけど、「なんでこんなに高いんかな」と自分で疑問のあるやつはあえて低めにつけて出したりします。あとはやっぱり本の状態なんかもですね。
僕は大阪の古書組合(※1)っていうのに入ってないんで、仕入れはなかなか難しい。入ってたら毎日競り市があるから不要な本はどんどん出せるんですけど。なんでもかんでも引き取るっていう昔の古本屋みたいなのは、今はどこの店でもやりにくいと思いますね。
(※1)古書組合
主な活動は古書籍市場の開催、取引に関する情報提供、古書に関する知識の普及活動など。
各都道府県にある。
―お店のこだわりはありますか?
K うーん……あんまりないですけどねえ。いい本+売れる本が定期的に入って売れていくサイクルがあれば続けていけるから、いい本を置いときたい、品揃えを良くしたいっていうのはありますけどね。
―本が売れてしまって悲しいということはあるんですか?
K 始めの方はありましたね。それまでに自分が好きで集めた本をほぼ手放したんで。
今も入ってきてその日のうちに売れてしまう時は、もうちょっと置いときたかったなってなります。
―お客さんはどういう人が多いですか?
K 20代・30代が多いですけど、もっとお歳を召した方も来られるし。10代・20代前半の学生さんはあまり来られないですね。
特に売りにくる人は20代・30代が多くて、範囲が狭いジャンルだと皆さん通ってきた道が似てるんですよ。だから同じ本のストックが何冊もできる。それが嫌ってわけじゃないんですけど。同じのが何回も入ってきては売れるってこともありますね。
あと、2000年代に出版されたような新しめの本は入ってくるんですけど、昔の古本屋で見掛けたような背表紙が茶色い感じのはあんまり入ってこなくて。古い物も入ってきたらいいなと思うんですけど、なかなか難しいですね。
―お客さんは1日にどのくらい来ますか?
K めっちゃ来る日もあれば、1人も来ない日もあります。近所にSOCORE FACTORYっていうライブハウスがあるんですけど、そこのイベントの特需があったり。「あ、こんなんある」って入って来るんやと思いますけど、忙しすぎて頭爆発しそうになる時もたまにあります(笑)
―ライブスペースもありますが、当初から作ろうと思われていたんですか?
K いや、全然。ある時知り合いに展示をさせてほしいって頼まれたんですけど、その時にライブもしたいって言われて。そこからちょっとずつやり始めたのがきっかけですね。
―ライブやイベント出演者の方々とはどういう繋がりがあるんですか?
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何度かライブをしているシンガーソングライター池間由布子のアルバム「しゅあろあろ」

何度かライブをしているシンガーソングライター池間由布子のアルバム「しゅあろあろ」

K レコードが好きでたくさん買ってたんですけど、同時代のインディペンデントな感じでやってる人達のことってあんまり知らなくて。20代の頃はライブもそんなに行ってなかったし。
でも店をやるようになってからちょっとずつそういう知り合いが増えて。初めましての人もいるし、もともと自分が好きだった人に何かのきっかけで出てもらえることもあります。
―置いてあるCDもそういう方達の物が多いのでしょうか?
K 新品の物はそうですね。あとは同じレーベルだったり、もともと自分が好きやった人の物も置いてます。
―カフェもされてるんですね。
K うちだけじゃなくて、今って割と本屋にこういうスペースがあるとこ多いじゃないですか。古本屋って言ってるけどほとんど雑貨とか。
それは古本が売れないからやと思いますけどね。皆さん色んなとこから粗利を持ってきたいんじゃないですかね(笑)
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―素敵な店内ですが、内装のこだわりなどはありますか?
K 内装屋さんに「こうしてくれ」って言ってやってもらったんですけど、自分の理想の内装かというとそうじゃないですね。古い喫茶店が好きでよく行くんですけど、ほんまはそういうとこでやれたらいいなーって。でも今新しくそういうのを作ろうと思ってもできないんで。
天井を抜いてるじゃないですか、もともとこうやったんですけど。こんなん僕全然気に入ってないんですよ(笑)
―意外です(笑)
K 壁の塗装もそれだけで何十万円も掛かるから全部自分で塗りましたね。こだわりとかじゃなくて単にお金が掛かるから。
―もともとはどんなお店だったんでしょう?
K ここが入る前はネイルサロンだったそうです。だからトイレはなんかやたらとゴージャスな感じで、それも全然気に入ってない、もう全く気に入ってないですね(笑)
―そうなんですか(笑)
K 移転前の店は古い民家を改築して、悪くはなかったんですけど狭すぎて。ここはここで広すぎたり。なかなか理想にばちっとハマるのは難しいなあと。
―移転のきっかけは何だったんですか?
K 全然お客さんも来ないし、自分がそこでやるのにも飽きたし、本も増えてきて狭いなあと。店辞めようかとも思ったんですけど、まあ辞める前に1回移転してやってみたいなと。
―前のお店はどういう所にあったんですか?
日本橋の4丁目ってとこやったんですけど、ほんまは1丁目とか千日前でやりたかったんですよ。昔そこは家具屋街で、古本屋もちょっとあって。全然空き店舗がなかったんですけど、僕が4丁目で店をやり始めてから家具屋さんがなくなってきて、代わりにご飯屋さんとかバーがいっぱい入るようになって。だから今難波のその辺は食べ物屋さんがめちゃくちゃありますけど。
で、ネットで色んなとこの空き物件を眺めてて、ここの外観を見て、ちょっと見に来てみて。この北堀江っていう町には普段全然来ることもなかったし思い入れも特にはなかったんですけど(笑)自転車で来てみたら意外に近くて、今住んでる日本橋から通えないこともないかなと。まあ移転したからといってお客さんはそんな増えてないですけど(笑)
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―この町について思うことはありますか?
K なにわ筋を挟んで向こうが北堀江1丁目、こっちが2丁目なんですけど、1丁目は服屋とかがめっちゃあって若い人がいっぱいいるじゃないですか。でもこっちに来たらちょっと静かなんですよ。昔から住んでる人とか学校も多いですし。
だから1丁目やったら全然選択肢には入らなかったけど、ここは割と生活感があって、当初思ってたよりは好きになりましたね。
―ゴチャゴチャした所はお嫌いなんですか?
K いや、ゴチャゴチャしててもいいんですけど、自分の中では難波とか千日前、例えば西成の花園町とか北天下茶屋らへんのそういうゴチャゴチャしたとこは好きかなあと。昔っぽい感じが残ってるとこがいいかなと思いますね。
―お話をうかがっていて、下町やレトロな物への趣味を勝手に感じたのですが、特に魅せられた時代はありますか?
K 各時代に好きな部分ってあって、音楽だと80年代特有のもんも好きやし、70年代特有のもんも好きやし。
休みの日には古い喫茶店を巡り歩くことが多いんですけど、年代によって内装のデザインがだいぶ違うんですよね。80年代っぽいデザインがいいなって思う時もあるんですけど、70年代っぽいもんも好きやし、戦前の文化が好きだったりもするし。
レコードもそうなんですけど、懐古趣味ではなくて、昭和の時代って長かったのもあってだいぶずさんやったと思うんです。でもその代わりにダイナミックな勢いがあったりするから、そういうので面白いなとは思いますね。

Place info:
アオツキ書房 - anomura.info
アオツキ書房
古本を中心に中古CD/レコードを販売。買取も行う。
喫茶スペースとイベントスペースがあり、ライブやトークイベントも開催。
地下鉄長堀鶴見緑地線 西大橋駅③出口から徒歩約5分。
地下鉄四ツ橋線 四ツ橋駅⑥出口から徒歩約10分。
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