初心者の目線を忘れずにいたい
―昨今のフィットネスブームについて思うところはありますか? 例えば芸能人の宣伝やメディアの報道のやりかたについて。
K 単純にいいことだと思いますね。大会に出場される芸人さんの中には、多少お笑い的なところに走ったりする方もいらっしゃいますが、ボディビルやフィットネス、フィジークもまだまだマイナーな競技だと思うので。大きく捉えたら絶対にプラスになっていくと思います。
―業界の発展のためにも。
K そうですね。カラダを鍛えている人がメディアに出てもらって、宣伝してもらえる。どう捉えるかは人それぞれですし、筋肉質ってあんまりだなとか、気持ち悪いって思う人もいるかもしれないけど、その中には「かっこいいな/やってみようかな」と思う人もいるでしょうから。ありがたい話だと思います。
―木下さんの理想としては間口がどんどん広がっていって、それぞれが健康になるというか。
K 健康と、あとはやりやすいと思うんですよ。お金をかけずに1人でやれるスポーツなので。2、3人集まらないとできないものでもないし、逆に複数人で助け合いながらすることもできる。
―「高額のパーソナルジム」の流行についてはどう思いますか? 1ヶ月や2ヶ月の限定でトレーニングを行うような。
K そうですね。気がかりなのは、期待をしすぎて、やってはみたものの期待外れに終わっている人がいないかなと。高額を払っても「やっぱり無理なんや」とか「ウエイトトレーニングってしんどい割には効果も少ないよな」とか。そういう人が数多く出ていなければいいんですけど。
―なるほど。
K 想像ですけど、あれだけ一気に広まるとスタッフの数や能力が追いつかないと思うんですよ。極論を言えば、24時間サポートできるスタッフが、それぞれの利用者につけているのかどうか。本当にしんどかったり、そこそこ健康を害しても、見合った内容やサポートの体制が充実していれば、あの金額で叶えてあげればいいと思うんですよね。それはそれで成功だと思います。ただ、そういう説明や理解が現場にあるのかどうか。そういう心配はあります。
―そんな思いをするぐらいなら、マックスジムへ。
K そう思っている人はたくさんいると思います。特にこの業界の人たちは。後はパーソナルトレーナーという仕事をやってはる人たちですね。「そんな金額を出すぐらいなら、その半分でもっと良質なことをしてあげられるよ」って。全国にはそんなトレーナーたちがたくさんいると思います。
ただ、一方で「高額のパーソナルジム」のブームが「ダイエットやトレーニングについて、お金を払って教えてもらう」といった概念を根付かせたのも事実だと思います。10年、15年前からパーソナルトレーニング自体はありましたが、やはり東京や愛知、大阪といった都会が中心で、地方はまだまだのところが多かったので。
ただ、一方で「高額のパーソナルジム」のブームが「ダイエットやトレーニングについて、お金を払って教えてもらう」といった概念を根付かせたのも事実だと思います。10年、15年前からパーソナルトレーニング自体はありましたが、やはり東京や愛知、大阪といった都会が中心で、地方はまだまだのところが多かったので。
―ただ、個人的にはパーソナルトレーニングもまだまだ敷居が高いのかなとも思います。初心者の自分がお願いしてもいいのかなとか、筋骨隆々の人たちの中に自分が飛び込んでいいのかなとか…
K あるでしょうね。つい最近でも「私なんかが…」みたいなお客さんはいますからね。全然そんなことはないですよって話はするんですけど。
―そういう方々にアドバイスはありますか? 今から初めてみようかなという方々に。
K 現時点で良いカラダをされてる方にも絶対に初心者の時期はあるんですよね。だから、みんなそれぞれ初心者の気持ちはわかってるので、ジムに来て会員さんと話していただいたら「どうぞどうぞ」と快く迎えてくれると思います。私の理念としては、このジムに通うならみんな仲良く共有してやってくれという思いが強いです。なので、ボディビルの人が優遇されるということもないですし、力の強い人が我がもの顔をできるわけでもない。まあ「みんな平等ですよ」ということは常に言ってますので、来ていただけたら、あとは意外と打ち解けられることが多い気がしますね。
―初めはどんなトレーニングから始められることが多いのでしょう?
K このジムの特色かはわかりませんが、まずは、その人の過去の運動経歴であるとか、コンディションやケガの有無、あとは「今後どうしたいのか」とか「トレーニングにどれだけの時間を使えるのか」というポイントを個別に確認させてもらった上でオリジナルのメニューを組んでいきます。
―会員さんの数だけメニューの種類がある。
K そうですね。中には「経験者なので自由に機材を使いたい」という人もいるので、そういう時は私もノータッチで使ってもらってますね。諸注意と怪我だけ気を付けてくださいねと伝えて、あとは自由にのびのびとトレーニング。まあ、経験者の方でも「他でやってきたけど、伸びなかった」とか「もう一度、メニューを組み直してほしい」という人には、色んな質問をさせてもらって、その人の今の状態や目的をイメージしながらメニューを組んでいくこともあります。
―先ほどから流れているジム内の音楽ですが、この選曲も木下さんが?
K だいたいはそうですね。曲も大事かなと思うんで。
―やっぱり、ノリの良い曲とかを中心に?
K ノリよくリズムよくテンポよくいってほしい時には、そんな曲をかけてますね。時間をかけて高重量でキッチリいってほしい時にはロックとかヒップホップとか。まあメンバーを見たり、時間帯を見ながら。本当はもっとウーハーを効かせたいんですが、ご近所さんの迷惑になりますので。
―付き合いも尊重しながら。いま改めてジム創設からの19年間を振り返って、マックスジムの特徴や、今後の展望があれば聴かせてください。
K やっぱり、これからはそのジムの個性っていうものを出していかないと、どんな業界でもしんどい時代だと思うんですよね。うちの場合、それが何かなって考えると、やっぱり私の今までの経験とか知識とか、市の施設とか大手のフィットネスクラブさんには無いような設備をちゃんと使って、ひとりひとりにしっかりと対応させることができる、というところなのかなと。私自身もウエイトトレーニングを25年ほど行ってきましたし、本格的なダイエットを行った経験もあります。そして、その期間に多数の方々をサポートさせて頂きました。その経験は、かけがえのない財産だと思います。
―それを低額で、というのはすごい魅力的ですよね。
K もちろん、ワンランク上げてしっかり見てほしいってことになると、パーソナル料金というのが発生するので一概に低額でとは言えませんが。ただ、ちょっと来られたついでに2、3の質問とか、1セットだけ補助で付いてほしいとかは全然かまいませんので。
なので、フリーで自分のペースでやりたいという人には低額で、しっかりとサポートが付いた正しいダイエットやトレーニングがやりたいという人にはパーソナルで協力できるというのが、うちの良いところなのかなと思いますね。
なので、フリーで自分のペースでやりたいという人には低額で、しっかりとサポートが付いた正しいダイエットやトレーニングがやりたいという人にはパーソナルで協力できるというのが、うちの良いところなのかなと思いますね。
―それは木下さんというトレーナーの特徴とも繋がってくるのでは?
K 私自身はボディビルの競技の経験もありませんし、ただウエイトトレーニングが大好き、健康や栄養が大事というところからやってきた人間なので、その目線を忘れずにいたいとは思います。競技者だけでなく一般の方や初心者の方とも同じ目線に立ってしっかりと説明をしたり、話を伝えたり。そういうことを言葉を選びながらやっていかないと広がりもしないし、理解もしてもらえないと思うので。
―ボディビルも含めたトータルフィットネスとしてのカラダづくりというか。
K ボディビルだけでなく、カラダを鍛えることは良いことだと思います。例えば、最近よく言われているようにカラダづくりは「10年先を見据えた先行投資」という観点からも捉えることができます。
―医療費の軽減にもなる。
K そうですね。なので、その大切さと言うのは伝えていきたい。ただ、行き過ぎて競技志向になるとリスクが生じるので、それは競技アスリートに任せて、健康としての運動を広めていけたらなとは思いますね。
―その場合の運動の方法などは?
K それぞれが自分に合ったやり方をいろいろ模索しながらやっていく。ある人にとっては趣味ですし、ある人にとっては楽しみのひとつだったりする。だから、いつも気をつけているのは「必ずこうじゃないといけない」とは言わないということです。私の考え方はこうですとは言いますが、相手の意見を頭ごなしに否定するのはよくない。それぞれの考え方に合ったメニューをその都度つくっていく。それが私の役割ですね。
2016.02.22 マックスジムにて
「会員さんの数だけ、メニューの数がある」
あらためて今、木下さんの声をたどり直す。
100人あるいは1000人分のメニューづくり。
指導者としての経験、豊饒な知識とともに、
そこに要されるのは「青二才の手つき」だろう。
つねに初心者の視点から、スポーツの魅力を忘れずに。
そしてそれは、2014年の秋に京都の料亭で聴いた
―子どもたち楽しくなるでしょ―SEIKAの声とも共鳴する。
あらためて今、木下さんの声をたどり直す。
100人あるいは1000人分のメニューづくり。
指導者としての経験、豊饒な知識とともに、
そこに要されるのは「青二才の手つき」だろう。
つねに初心者の視点から、スポーツの魅力を忘れずに。
そしてそれは、2014年の秋に京都の料亭で聴いた
―子どもたち楽しくなるでしょ―SEIKAの声とも共鳴する。