ヨンソクの魅力
―ともあれ、今回の記録達成を機に4足走行や玉腰くんの存在を知った方も多かったと想像します。大会後、環境に変化はありましたか?
T そうですね。自分自身の話だと、自信がつきました。色んなものにチャレンジしようという。
―例えば?
T まず筋トレの量を増やしたり、縄跳びを始めたり。あと、柔軟性をつけたいと思ったので、毎晩お風呂上りにストレッチをやるようになりました。
―周囲の反応とかは?
T そうですね、より応援してくれるようになったというか。「頑張ってね」っていう声をよくかけてもらえるようになりました。
―それは嬉しいですね。
T あと、取材の依頼も増えましたね。『ドデスカ!
』とか、『きわめびと』とか、『モーニングバード 』とか。―新聞社も含まれますね。Androidのコマーシャルには、いとうさんが出演されていましたが…
T まあ、いとうさんの方がインパクトがあるので(笑)
―インパクト。
T 髪型とか生き方も、いとうさんはすごいので。そっち選んだのかなって。
―玉腰くんは髪型を変える気は?
T 今のところは全然ないですね。小学校から変わってませんし。
―散髪は床屋で?
T 基本的にバリカンなので、いとこのお母さんに刈ってもらったり。最近は姉とか、たまに床屋さんにも行きます。
―質素というか、あまり目立つのは?
T 好きじゃないです。
―目立つのは4足走行の時だけで良い?
T そうですね(笑)
―4足走行の大会ですが、参加費とかは…
T 無料です。誰でも参加できて、実力があったらそのまま決勝に進めます。
―国内の競技人口は何人ぐらいですか?
T 大会に30人ぐらい来てたので…50人くらいですかね。
―国外では?
T 大会はないと思います。YouTubeには海外の人が4足で走っている動画もありましたが。
―その人たちの速度は?
T まあまあまあ(笑)
―想像に過ぎませんが、例えばウサイン・ボルト
が4足走行の大会に出たとしたら…
T 最初は誰でも難しいと思います。以前、武井壮さんといとうさんが4足走行の勝負をしたことがあったんですけど、ぶっちぎりでいとうさんが勝ってたので。
―たしかに普段あまり取らない姿勢ですしね。
T でも、慣れたら簡単です。とりあえず4足走行のかたちはすぐにできますし。
―身体ひとつあれば誰でも。
T あとは軍手ですね。
―軍手?
T はい、まずは軍手1枚。大会中は軍手の上からもう1枚滑らない手袋を着けます。
―それらの元々の用途は?
T 工業用だったり、業務用スーパーとかで売ってる普通のやつです。
―4足走行専用の軍手は?
T ないですね(笑)
―店員さんもまさか4足走行に使っているとは思わない(笑)まずは軍手と手袋と…服とかは?
T 服は普通に動きやすいものですね。
―靴も運動靴?
T 公園の時はスパイクを履いています。
―スパイクのメーカーは?
T ミズノ
ですね。
―それ以外で必要な道具は?
T それだけですね。とりあえず、手袋があれば誰でもできます。
―あとは場所の問題ですか…公園以外の練習場所などは?
T あとは家の廊下とか、家の前のコンクリートだったり。普通に車とかが通っている所で。
―車が来た時は?
T 見つかると危ないので、スッと立ち上がって。何事もなかったように歩いてます。
―4足時、前方は見えるのでしょうか?
T 見えませんが、夜にやっているので。車のライトだったり、音で分かります。
―なるほど。トレーニング以外の時間で、4足で走りたいなと思うことはありますか。
T 結構ありますね。すごいきれいな地面とか見ると、ここを4足で走ってみたいなぁとか。人に見られたら嫌なので、グッと堪えますけど。
―それは笑われたくないとか?
T 笑われるのはいいんですけど、驚かれてそのまま警察に通報みたいなのが一番怖いですね。
―これまでにアクシデントというか、4足走行中に予期せぬ出来事が起こったことはありましたか?
T うーん、通報とかは今のところ無いですけど。さっき話したモンキーセンターで…
―いとうさんと未来也くんと行った?
T はい。センターから少し離れた公園で、いとうさんの取材があって。僕はその隣で適当に走っていたんですけど、走ってたら女の子と思いっきり激突してしまって…
―小さい子と?
T 小学生ぐらいの子でした。その子がバンッて吹っ飛んでしまって。女の子が泣いてるのを見て、すごく申し訳ない気分になりました。
―前方不注意ですか。ともあれ、4足走行が広まったら誤解は減りそうですよね。事故はともかくとして。
T そうですね。本当に誰でもできるスポーツなので、広まってほしいです。
―運動としても、競技としても。
T 競技としては正式な何かの種目になってほしいですね。最終的にはオリンピックとか。
―なるほど。これから4足走行を始めようとする人にアドバイスがあればお願いします。
T 最初は抵抗があると思うんですけど、始めたら本当に楽しいので。走行じゃなくても、家の中とかをぐるぐる歩行するだけで良い運動になると思います。
―確かにカロリー消費量とかすごそうですよね。
T 2足走行に比べて、4足走行は運動量が4倍かかると言われています。なので、効率よく全身を鍛えることができる。あと、2足走行だと腰を痛めたり、肩こりとかを起こしてしまいがちなんですが、4足走行だと負荷が分散される。手と足で。なので、どこかを痛めることも少ないです。
―老若男女に関わらず?
T そうですね。どんな方でもできるので、無理をせずにゆっくりと歩行から始めてほしいなと。
―ダイエットとかにも…
T 向いてますね。疲れは分散されませんが、痛みは分散されるので。
―健康を求める方はゆっくりと、速度を求める方は大会に。
T はい。大会は1年に1回だけですが、出たらハマると思います。
―現時点で、玉腰くんにとっての4足走行とは?
T 4足走行がないと、筋トレ含め日々の努力が全くなしになってしまうので。毎日が平凡になると思います。やってたら、カラダも鍛えられるし、生活にハリも出るので。
―離れることは考えられないですか?
T はい。おじいちゃんになっても元気でいたいので。このまま続けて、今のうちに体力をつけて、歳をとっても元気に暮らせるように準備していきたいですね。
2015.04.01 同朋高等学校にて
インタビューから7か月後の2015年11月6日、再び4足のギネスレコードが更新された。更新者はいとうけんいちさん、玉腰くんの「憧れの人」である。奇しくも申年の2016年。記録の更新はあるのか、4足はどう進化していくのか。「生き残る種とは、最も強いものではない。最も知的なものでもない。それは、変化に最もよく適応したものである」といった『種の起源』のことばとともに、われわれもまた4足の変化を追い続けていこうと思う。