はじめてのギネスレコード
―「いとうさんを超えたい」という目標をはっきりと持ったのは、いつ頃ですか?
T 2013年の大会が終わった後ですね。思ったよりも、いとうさんと実力が近かったので。「あ、これならもっと練習すればいけるんじゃないか」って。
―高校2年生の頃ですか。大会に出たのは、その時が初めて?
T そうですね。というか、大会自体が1回目だったので、全員が初参加ですね。
―なるほど。1回目の大会
での結果は?
T 3位でした。
―そして翌年の、2回目の大会でギネスレコード(1位)ですか。急成長の裏側で、例えば競技や大会の規定に悩まされたことなどは?
T 色々あります。例えば、1回目の大会が終わっていとうさんに近付けたので、次の大会までは全力で自分独自の走り方を見つけようと考えました。それまではずっと、いとうさんを真似て【ギャロップ走行】で走っていたんですけど、アレコレと考えて【後ろ足走行】に変えました。で、練習してたら15秒03っていうタイムが出て。
―これはイケる、と。
T でも、大会の3週間前になって申請したら、ギネス記録側からフォームの指導が入りまして。それまで自分が1年間練習してきたフォーム【後ろ足走行】がダメですって言われちゃって。
―申請というのは動画かなにかで録って送るんでしょうか?「こんなフォームで走ってます」って。
T いえ、申請自体は自分の名前とか走り方とかを記入するだけですね。
―申請して許可が下りて…記録の計測は?
T 大会の当日に、本番中に計測ですね。
―なるほど。しかし【後ろ足走行】はなんでダメだったんでしょう。
T それも色々と複雑なんですけど、ギネス側だけじゃなくて、いとうさんにもお願いされて。
―フォームの変更を?
T はい。【後ろ足走行】は速度は出るんですけど、身体を痛めやすいみたいで。いとうさんからは「もしその走り方で1位を獲っちゃったら、そのフォームを真似て身体を痛めるひとが出てくるかもしれない。それは避けたいので、【ギャロップ走行】に戻してもらえませんか?」というようなことをお願いされました。
―4足走行界というか、競技の普及を考えて。
T そうですね。
―いとうさんは、その身体を痛めない走り方で?
T はい。ずっと【ギャロップ走行】です。
―しかし、3週間前にフォームの改善を余儀なくされるというのは…
T 「えっ!」って思いました。自分は何を練習してきたんだろうって(笑)
―大会当日、東京には朝に?
T そうですね。朝に出て、東京をぐるっと見て、昼過ぎぐらいに競技場に着きました。
―ぐるっと回って?
T 渋谷とか、色々なところに行きました。
―観光ついでに…
T いや、姉と一緒に行って。姉は服を見に行って、自分はウォーミングアップをしていました。
―渋谷の公園で?
T そうですね。
―大会は何時からだったのでしょう?
T 14時に開場、15時から予選、16時に決勝みたいな。自分はシードだったので、決勝からでしたが。
―予選は見ましたか?
T はい。だいたい20人ぐらいがエントリーしていましたね。
―玉腰くんの他にも高校生は?
T いましたね。いちばん下で中学1年生ぐらいの子もいました。広島から来た子で。決勝にはギリギリ残れなかったんですけど。
―そして、予選を経て決勝が始まったと。試合前の手応えは?
T 正直、自信は無かったです。フォームの変更があって、3週間しか【ギャロップ走行】の練習ができなかったので。まあ3週間にしては悪くないところまでは仕上げましたが。
―コンディションはどうだったのでしょう?
T 普通ですね。でも、前日の部活の時に我慢できずに懸垂をやってしまって…ちょっと無駄な筋肉を使っちゃったかな、と。
―「我慢できず」に(笑)決勝の記憶
は?T あまり覚えていませんね。走り切って、しばらく経ったらブワーって取材の人たちが来て。「好きな動物は?」とか…
―その時の答えは?
T たしか「お猿さんとワンちゃんです」と。
―そこはブレずに。ギネスレコードを更新して、今後の目標などは?
T 目標はとりあえず100mを4足で12秒台ですね。
―12秒台?
T 最終的な目標は、4足で自分の2足を超えるという。2足のベストタイムが「12秒77」なので。過去に計ったタイムなので今はもう少し速いかもしれませんが。
―2足のタイムは留めたい。
T そうですね。あまり速くなると4足で超えられなくなるので。
―しかし、かなりの難易度ですよね。超えるというのは【ギャロップ走行】で?
T そうですね。最後には【後ろ足走行】も考えてますが、できるだけ【ギャロップ走行】で。
―記録更新者としてルールの変更を望んだりはしますか? 競技に限って【後ろ足走行】もアリとか。
T それだと、運営の方針や大会の場所も自分が考えなきゃいけないんで。
―今は、全ていとうさんが?
T はい。ルールを決めて、駒沢オリンピック競技場
を予約して…
―すごいですね。
T 4足を極める、そして広める。やっぱりすごいなと思います。
―「ライバルではなく、憧れの人」という先の言葉にも繋がる背景ですね。
T 練習しながら、取材を受けて収録もこなして。
―いずれは玉腰くんも、いとうさんのような存在に…
T いや、なれないと思います(笑)
―いとうさん以外で憧れの人はいますか?4足走行の世界に限らず。
T やっぱり武井壮さんはすごいと思います。陸上界のトップアスリートとして。
―武井さんにもなってみたい、と?
T そうですね(笑)
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