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日本 • 愛知 • 名古屋市

Introduction

「The Cool Core」(戦極MC BATTLE)

「ミスターアサシン」(同上)

「名古屋が生んだ孤高の喧嘩師」(フリースタイルダンジョン)

数々の通り名とは裏腹に、

本人の口から聴こえてきたのは、熱く理知的な声だった。

“当然のように未来は自分で切り開いて行く以外ない”

言葉の芸術家が描くヒップホップの未来とは。

名古屋=JET CITYの片隅で、夜行性の夢を覗く。

Interviewee profile
呂布カルマ

大阪市東淀川区生まれ、愛知県名古屋市育ちのラッパー。青年期よりプロの漫画家を志し、名古屋芸術大学・美術学部での修練を経て、ラッパーと成る。発表された音源を始め、諸ジャンルへの客演、愛知県内外でのライブから国内最高峰のMCバトルまで伸びたその勢いは今や飛ぶ鳥をも落とす。JET CITY PEOPLE代表。

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好みの断片を繋ぎ合わせる

-10周年を迎えた日乃丸というイベントについても聞かせてください。
呂 今僕が唯一オーガナイズしてる/仕切ってるイベントです。もともとブッダの昔の店長の人が立ち上げたイベントで、別に日本語ラップに限らずに邦楽縛りのイベントやったんすけど、僕が1年目か2年目ぐらいから出るようになって。その主催がどんどんと変わって、たまたま今僕のところに来てるっていう。僕で4代目なんすけど、僕の前に仕切ってたやつがラッパーやったんで、ヒップホップ色が強くなって。今もその流れで出てるやつもラッパーだけやし、まあロックもかかるっすけど、ほとんど日本語ラップのイベントっすね。それがちょうど今年で10年目で。
-10年も続くというのは…
呂 緩くやってますけどね。最近はちょこちょこ僕も名前が売れてきたからフライヤーとか作らなくても平日やったらいいかなぐらいの客が入るんすよ。楽っすね(笑)
-コラージュみたいなものはどなたが?
呂 僕っすね。まあコラージュというか画像拾ってきて文字載っけてるだけっすけど。
-今回はなんでも言って委員会の…
10周年SPの時のイベントフライヤー

10周年SPの時のイベントフライヤー

呂 スペシャルなんで三宅先生っていう…。ふだんから趣味で掲示板とかでグラビア掘ってるんすけど、そこにエロいの以外とかも投稿されるんすよね。そっからついでに拾ってるぐらいなんで。副産物っす。
-グラビアにはこだわりが?
呂 好きっすね。グラビアをエロい目的で掘ってるんじゃないんすよ、僕は。ほんと趣味としか言いようがない。女の身体ってキレイじゃないすか。だから好きなんすよね。
-それはラップを始められる前から?
呂 そうっすね。中学生の頃とかはエロい目的やったんすけど、週刊誌のグラビアのページを切り抜いてスクラップしたりとか。そういう基本的なところをずっと今もやってるというか。エロ本買ってスクラップとかはもうしなくなったけど、ネットに落ちてる綺麗な画像があったら、なんとなく保存してしまったり。女の身体が小さくて景色が大きいときは「景色いらん」とかいってトリミングしたり。
-やはり篠崎愛さんは別格ですかね?
呂 別格っすね。もう10年ぐらい好きっす、ブッチギリで。
青山ひかるさんは?
呂 ブッチギリの2位っすね。篠崎愛は僕の中で非の打ちどころが無いんすよ。青山ひかるは非を打とうと思えばいくらでも打てるんすよ。カメラマンの腕の差が如実に出るんで。篠崎愛は誰が撮ってもすごいんすけど、そういう意味で青山ひかるの方が玄人好みなんすよね。
-篠崎さんとはイベントで共演されたそうですが?
呂 本当に夢みたいな話でしたけど。でもあのとき一緒になるっていうの忘れてて、嫁の実家に里帰りする予定を入れてたんすよ。で、嫁にめちゃめちゃ謝って飛行機で自分だけ帰ってきて。当初の帰る予定だった飛行機をキャンセルして、キャンセル料も払って新たにチケット取ったんで、実はギャラ引いても赤字っていう。

-そこまでしてでも。
呂 で、そん時けっこう衝撃的やったんが楽屋が一緒やったんすけど、楽屋でもみんな「篠崎愛や」っていう目で見てるじゃないですか。でも彼女は楽屋でも「篠崎愛」を崩さないんすよね。朝から大阪でイベントやって、名古屋でラジオ出て、またどっか行って、名古屋の夜のイベント出て、また朝一で東京行ってみたいな。自分で組んでるスケジュールなんてひとつも無いと思うし、こんなかわいい子がこんだけ周りにプロフェッショナルを見せつけてて、こんなに謙虚に働きまくってて。一方俺は…みたいな(笑) 絶対勝てへんやんって痛感したっすね。
-なるほど。楽曲についてもお聞きしたいと思っていました。1stアルバムの1曲目から「消エ失セロ」と。シーンに対する不満というか。
1st『13 Shit』 2009.01.07にMeikou recordingsよりリリース 2nd『四次元HIP-HOP』 2010.08.18にULTRA-VYBE,INC.よりリリース 3rd『STRONG』 2011.08.17にULTRA-VYBE,INC.よりリリース 4th『The Cool Core』 2014.05.09にJet City Peopleよりリリース

1st『13 Shit』
2009.01.07にMeikou recordingsよりリリース
 
2nd『四次元HIP-HOP』
2010.08.18にULTRA-VYBE,INC.よりリリース
 
3rd『STRONG』
2011.08.17にULTRA-VYBE,INC.よりリリース
 
4th『The Cool Core』
2014.05.09にJet City Peopleよりリリース
 

呂 むっちゃストレス溜まってたっすね。
-そのストレスは日本語ラップのシーンに対してですか?それとも音楽シーン全体に対する…
呂 そん時はまず名古屋っすね。自分の地元というか、周りにイライラしてて。1stとかって結構ラップのことを唄ってる曲が多いと思うんすけど、当時はホントにラップのことばっかり考えてたっすね。
-アルバムの作り方についてもお聞きしたかったのですが。
呂 アルバムを作る時ってコンセプト決めて作ったりとか基本しなくて。曲が8割ぐらい溜まったら足りない部分を足して出そうかみたいに作ってるんで。ただ『13shit』に関してはそのあった中から選んだんで、作った時期もバラバラやし。だから本当にまんますよね。13個のクソっていう。
-その作り方はずっと変わらないですか?
呂 そうですね。『STRONG』だけは自分が20代最後ぐらいのアルバムだったんすけど、今後バーンといくにつれてSEXとかDRUGのことって段々と唄いにくくなっていくやろなっていうのを感じてて。そういうのをここで全部出し切ろうっていうのは明確にあったっす。それ以外は曲が溜まるごとに出す感じですかね。
-1st、2nd、3rdと1年置きにリリースされていますが。すごいペースですよね?
呂 リリック書くのが早かったんすよ。ビートさえあればいくらでも書けるっていう感じだったので、自然とすね。いつも仕事中に書いてたんすけど、車の仕事だったんで。運転中にiPodでもらったトラックを聴いて、ブツブツ考えながら、信号待ちでメモってみたいな。一日で一曲できるみたいな、そんな作り方してましたね。最終的にはメモしながら運転してたら前の車にオカマ掘っちゃって、その仕事辞めたっすけど(笑)
-どんな所でどんな時に歌詞を書くことが多いですかね?
呂 仕事の合間っすね。ずっとそうやってひとりでやる仕事やったんで。でも、前職が塾で働いてたんすよ。音も聴けないしひとりになる時間っていうのもあんまなくて。で、一気に制作ペースが落ちたっすね。今まで机の上でよし書くぞっていうやり方をしてこなかったんで、どう書いていいかわからんなみたいな。車乗ってたりとか、歩いてたりとか、景色が動いている方が出てくるんすよね。座って、紙の前に向かっても何も出てこない。でも、そうも言ってられないので。今はもう仕事辞めてるんで、書こうと思って書くしかないじゃないですか?その書き方を見つけないとなとは思ってますね。
-書くときは手書きですか?
呂 手書きっすね。
-リリックノートみたいなものは?
呂 最近やっと作ったんすけど、以前は仕事の書類の裏とかに書いて。失くしちゃうんすけど。リリックノートに書いても普段は手ぶらなんすよ。持ち歩かないから、パッと浮かんだ時に書けないっすよね。まあiPhoneでも全然いいんすけど、線引いたりとか囲んだりとかできないんで。そういうアプリもあるかもしれないすけど。

呂布カルマ「オーライオーライ」MV

-呂布さんにとっての究極の言葉、理想のヴァースとは?
呂 けっこうパズルなんで。テーマを決めて書くというよりは書き出しの一節を書いて、その韻につながるようにしていくんすよ。タイトルは後から考えるんすけど。思ってもないような言葉、やっぱり韻で書いていくんで。例えば韻って時間かければいくつでも出てくるじゃないですか。で、その中からどれを選ぶかがセンスやと思う。貪欲なやつって全部使ってしまうんすよ。そうするとしょうもなくなってくるんすけど。5個浮かんだとしても、その中から1個みたいな。
-選別していく。
呂 韻と韻とのあいだを繋ぐ言葉っていうのは考えて書くじゃないですか?そこで自分の思想とかが出てきたりして、韻のつじつまを合わせるためにその間を一生懸命考えるんすけど、そのとき韻の都合で書いたリリックが後々本当になることが結構あって。ラッパーってみんなそれ言うんすけど。なんで極力ネガティヴなことは書かないようにっていうのは考えてますね。あとリリックで言ってしまったからには「これやらなアカンな」って。引っ張られるっていうか。
-なるほど。呂布カルマという名前の流通についてなのですが、ご自身の感覚としては速かったですか?
呂 いや、遅いですね。正直1st出して生活変わると思ったんすよ。てかCDさえ出せばなんとか生活できるかなと思ってたんすけど、全然できひんやんって。1st出して、2nd出して、次こそいけるかな、いや全然いけへんやんって(笑)
ジワジワは上がってきてたんすけど、3rdの時とかはどうせこれじゃ変わらんなってなってて。4th出す時もそんなに期待はしてなかったんすけど、意外と思ってたより反響があって。まあバトルだと思うすけど。
-呂布さんが思う作品とバトルの違いとは?作品では韻をかなりタイトに踏まれていますが。
呂 単純にバトルで韻合戦になると、普段から韻を踏む練習をしてるやつらが強いんすよ。でも即興で韻踏む練習をするぐらいなら音源の歌詞を書いてた方がいいじゃないですか。で、そこで競うと絶対勝てないんで、相手が言われたくないこととか言って、要は相手の調子を出させないようなことを言ってやる。韻を踏むことしか考えてないやつが調子崩れた時ってめっちゃ弱いんすよ。こっちは踏まなくても勝てるっていう、それにようやく気付いて。
-合気道のような。
呂 最初は僕も頑張って踏もうとしてたんすけど、それってしんどいしダサいこととかも言ってしまうんすよ。音源やったら浮かんでも触れんようなダサい韻を触ってしまったりとかして。それもその場で流してくれるんやったらいいすけど、今映像に残るじゃないですか。後から見て「痛っ!!」みたいな(笑) もう韻踏むのやめようって思ったすね、如実に。それよりも映像で観たときにそいつのアティテュードが分かったりとか、言葉のセンスがヤバいなとか、「音源聴いてみよかな」って繋がるようなバトルをやった方が全然いいなって。完全にスイッチしたタイミングがあって、そっから勝てるようになりましたね。間違ってなかったという。
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