anomura

すてきな声に、会いにいこう
photo by Pay a.k.a Wildpit¢h
interview - 日本, 愛知, 名古屋市, Studio NEST

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Introduction
「The Cool Core」(戦極MC BATTLE) 「ミスターアサシン」(同上) 「名古屋が生んだ孤高の喧嘩師」(フリースタイルダンジョン) 数々の通り名とは裏腹に、 本人の口から聴こえてきたのは、熱く理知的な声だった。 “当然のように未来は自分で切り開いて行く以外ない” 言葉の芸術家が描くヒップホップの未来とは。 名古屋=JET CITYの片隅で、夜行性の夢を覗く。
Interviewee profile
呂布カルマ

大阪市東淀川区生まれ、愛知県名古屋市育ちのラッパー。青年期よりプロの漫画家を志し、名古屋芸術大学・美術学部での修練を経て、ラッパーと成る。発表された音源を始め、諸ジャンルへの客演、愛知県内外でのライブから国内最高峰のMCバトルまで伸びたその勢いは今や飛ぶ鳥をも落とす。JET CITY PEOPLE代表。

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表現者の勝手

-これまでに影響を受けた芸術家などはいらっしゃいますか?
呂 ほとんどいないっすけど、新井英樹(※1)はちょっとあるかもしれない。『ワールドイズマイン』っていうテロリストのマンガがあって。ラップをちょうど始めたタイミングで、その当時は911があったばっかりで、そういうのって絶版になってて、どこでも買えなくて。古本屋とかを駆けずり回って一巻一巻読んでたんすけど、明確な思想があるわけじゃなくて理由のない暴力をひたすらふるうっていうか。それが僕がラップやりたてのムシャクシャしてた時の感じとマッチしてて。そういうところに影響受けたっすね。
-ご自身の政治観などはありますか?「日乃丸」というイベント名やバトルでの立ち振る舞いなどを拝見していると、時おり右寄りに見えたりもしますが。
呂 まあ日乃丸とかは僕が始めたイベントじゃないんでね。モロじゃないですか(笑) だから変えたいんすよ。日乃丸の「乃」も、この漢字使うかねみたいな。何回書いてもキレイに描けへんし。ダサいと思うすけど、でも『曲がり角に立つ 平成の右翼』っていうテレビシリーズがあって。それは鳥肌実(※2)を掘ってた時に見つけたんすけど、そこには格好良い右翼がいっぱい出てくるんすよ。
右翼の思想っていうのは僕は全然知らないし、勉強する気もないんすけど、ともかく極端な右翼がいっぱい出てきて。特にトップに立ってるやつらが格好良かったっすね。『STRONG』っていうアルバムは結構声ネタを使ってるんすけど、全部そっからのサンプリングだったり。
(※1)新井英樹(あらいひでき)
漫画家。神奈川県出身。『宮本から君へ』『キーチ!!』など。生々しい描写や毒気のある物語が特徴
(※2)鳥肌実(とりはだみのる)
お笑い芸人、演説家。領土問題、北朝鮮、創価学会、政権、天皇制、日本教職員組合などに言及する芸風で知られる。その芸風からテレビでは取り上げられにくいということでも有名。2017年現在、全国で演説芸のイベント活動を行っている。
-そうだったんですね。
野村秋介っていう最終的には新聞社に行って拳銃自殺するやつがいるんすけど、そいつがむちゃむちゃ格好良くて。右翼なのにイタリアのブランドのスーツ着てるんすよ。「いや右翼って格好良くなきゃダメっしょ。僕は格好良いの好きだからね」とか言って。
あと、山口二矢っていって当時の政治家を壇上で殺したやつがおるんすけど、そいつが祀られてる場所に10代の右翼がお参りに来てて。インタビューのシーンとかあるんすけど、めっちゃ清くてそいつら。刺殺したっていうことに関して「善い悪いとかそういう次元じゃないんすよ」みたいな話を曇りない目でしていて。「圧倒的な正義なんすよ!」とか。ホントにそうか?って思うんすけど、影響力は強かったっすね。
-「右翼」や「左翼」ではなくて、徹底しているか/格好良いかどうか。
呂 そうですね。ダサいヤクザもおるんすけど、慎ましい生活しながら、街宣活動してる人たちもいるし。だから右翼って言っても一括りにはできないっすね。
SPOTLIGHT 2015 MC BATTLEのKBDさんとのバトルだったと思うのですが、「これはスポーツじゃなく芸術」という呂布さんの言葉がとても印象に残りました。

KBD vs 呂布カルマ” from『ENTER DVD VOL.9』

呂 まあ格好つけて言ってるだけっすけどね(笑) ただ、スポーツ的か芸術的かっていうのはあるじゃないですか。何が芸術でっていうのはハッキリは言えないすけど、練習したりとか訓練して出てくるものって僕の中ではあんまり芸術って感じはしなくて。それよりも思い付きとか、もともとあるものを自分の体を使ってトレースするっていうか、そういう方が僕は芸術って感じがしますね。
あと、仏師の人が「カタチを造るんじゃなくて木の中に埋まってる仏様を掘り出してあげる」みたいな感覚を抱くらしいんですけど、それに近いことを感じる時もあります。全部自分が造るんじゃなくて最初にある形を外に出してあげるみたいな。リリックが書けてバッチリはまった時って、これ以上ないというか。言葉の流れが完璧にあって、それに導かれて俺は書いたんやなみたいな。そんな時にはこれは芸術やなって感じますね。
-なるほど。
呂 それこそバトルやってる子とかがたくさん練習して、今流行ってるフロウとかを何とか自分のものにしようとしたり、こことここに韻を置くと効果的だっていうのが分かってて練習したりするのはスポーツ的で、それって手本があるわけじゃないですか。誰かに近づくための練習をするわけですよね。それって本来の自分からどんどんと離れていく行為じゃないすか。僕は自分が頭の中で思い描いてたことがストレスなくそのままできるようにって考えてるんで。だから「どうやったらラップって上手くなりますか」みたいな質問を受けても、自分で書いたリリックを自分で唄うのに練習いる?みたいな。練習せな唄えんようなもんなんか書くなよって(笑)
-これまでのご自身の曲の中で特にリリックがバッチリはまった曲はありますか?
呂 『四次元HIP-HOP』に入ってる「Freaky Promise」は言葉もガッチリはまってるし、気持ちいいなって思うっすね。あと最近6EYESとやった「BANG BANG」。あれもだいぶイケてるなって。DJ BAKUとこないだやった「BACK BONE」の客演のヴァースもいいの書けたっすけど。
-「BANG BANG」のビデオ、面白かったです。

6EYES feat. 呂布カルマ「BANG BANG」MV

呂 あれはHADAさんっていう映像作家の人で。撮ってる時は不安やったっすけどね。突っ込みどころ満載の人で頼りない感じのオッサンなんすけど。大丈夫?大丈夫?って言いながら撮るっていう(笑) ホントに大丈夫?みたいな。あと当日めっちゃ雨降ってて。でも歌詞の中で「傘は持ってない傘は持ってない」ってラインがあったから、これ傘差したらアカンなって(笑) 雨ざらしでやったっすね。
-そんな裏話が(笑) 6EYESさん以外に気になるバンドはいらっしゃいますか?
呂 アナログフィッシュ(※3)かな。今一番好きなバンドっすね。あそこってボーカルが二人いるんすよ。それぞれが曲を作るんすけど、特に下岡さんっていう人の方がドツボで、詞もいいし歌もいいし。詞の書き方とか見てると、たぶん下岡さんはヒップホップ的な素養がある人なんすよ。本人に聞いたわけじゃないんすけど。
(※3)アナログフィッシュ
1999年に結成された3人組のロックバンド。東京を中心に活動中。ギターボーカルの下岡とベースボーカルの佐々木が、それぞれ自作した楽曲を歌唱する。
-今後一緒にやったりとか。
呂 めっちゃやりたいっすね。
-日乃丸というイベントも呂布さんが格好良いなって思ったアーティストを?
呂 もうちょっと緩いっすけどね。クルーのやつとかは一緒におってストレスないやつら。まあ平日のハコ代とかもかかってないイベントなんで。もちろん最低限の上手さは必要っすけど、新人の子とかも全然出してあげる。まあそこで良くなければ2回目はないすけどね。
-レーベルやイベントの今後のヴィジョンなどはありますか?
呂 JCPはヒット作をボコッと出して、もっと潤ってそこから色んなことができたらと思ってます。まあでも実質動かしてるのは鷹の目なんで。あいつが不自由なくやれたらいいかなって感じすかね。
イベントに関してはぶっちゃけ別にやりたくなくて、他所のいいイベントに呼んでもらう方が楽っすね。日乃丸に関してはお金もかかってないし適当にやってるからいいんすけど、基本的にみんなに連絡して時間あわせたりとか苦手なんで。オーガナイズすると当日になって気を揉むことが多いじゃないすか。そういうの面倒くさいんで。

-なるほど。呂布さん自身の今後の展望はどうでしょう?
呂 仕事辞めたんで、二度と就活しないようにしていきたいっすね。あと、別に一生ラップだけやってようとも思ってないんで、ラップから派生した仕事でもいいし、才能だけで食っていけるようなことができればなって。大学の時の先生がその人も絵描きなんすけど、その人が「バイトするか、誰かのヒモやりながら、とにかく絵を描き続けてたら30過ぎたぐらいからポツポツ仕事が入り始めるから、それで御の字ぐらいの気持ちでやりなさい」みたいなことを言ってて。その言葉をガッツリ真に受けてたんで、一社も就活しなかったんすよ。結局、卒業してからは絵じゃなくてラップになったんすけど、ずっとやってきて今ポツポツ仕事が来るようになって。先生が言った通りになってるわって。成り行きで就職してたのもおかしいなって今は思うっすね。
-ありがとうございます。最後にファンの方々にひとこといただけますか?
呂 そうっすね。俺のやってる勝手な遊びに付き合ってくれて、遠くから来てくれたりとかお金払ってくれたりとか、それは本当にありがたいなって思います。でも、あんまりそっちに目を向けすぎて、その人たちを喜ばせようみたいな意識がちょっとでも頭の中にあるとそれはリリックに出てきてしまう。なので、あまり考えないようにしてますね。遠巻きに見とけみたいな。
-距離を置きながら。
呂 名前が売れてコンタクトとってくるのって女の子だったり、若い子が多いと思うんすけど、ファンの全体で見ると、それは全体のごく一部でほとんどの奴らはただ「格好良いな」ってCD聴いてるだけだと思うんすよ。それを勘違いして「コアなファンに向けて」とかだとクソダサくなるっていう。そのロジックは目に見えてるんで。若い子にわかるように言葉を簡単にしたり、マニアに向けて言葉を難しくしたりとか。それはイヤなんで他人のことは本当に一切考えないようにしてますね。自分に向けてだけ書いてるというか。

 
2016.07.20 bäckerei&cafe Bitteにて

conclusion

バトルで相手と対峙している時も、どこか違う次元にいるような、わが道をマイペースに歩んでいるような佇まい。その風貌も含めて、独特で、絵になるラッパー。
もし彼が東京でワンマン公演を開催するならば、ぜひWWWで観てみたい。
渋谷の地下に広がる映画館だったその場所は、今や彼のドープでアーティスティックな世界観を存分に表現できる数少ないステージに成っているから。
 
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Place info:
Studio NEST
栄能楽堂ビルの東館1Fに位置するレコーディングスタジオ。ボーカル録音、ミックス、マスタリングを始めとする様々なニーズに対応。主宰者:鷹の目氏。
 
時間: 月曜日~日曜日 13:00 - 3:00 *要確認
交通: 地下鉄名城線「矢場町駅」から徒歩8分/地下鉄東山線「栄駅」から徒歩10分
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