photo by 藤田和美

Introduction
詩を詠う、インターネットを舞台に、イメージするのは渋谷交差点。
絶え間なく行き交い続けるわたしとあなたとだれかの、その微かな共有空間はけれども確かな想像の一歩となってゆく。
十の詩人が織り成す巡り合わせのポエトリーリーディング企画。

 

 

 

Оへの巡礼   オーヘノジュンレイ   尾々前吾峰

 

 

 

 

Оへの巡礼

 

 

あの日、あなたを探しに行きました。

何故私を見つけてくれなかったのですか?

あなたに見つけてもらえたら、

私はこの世でただ一人特別な

偉大な人間になれたのです。

 

一度だけ、

一度だけでも君に会いたかった。

まるであの緑の絵の中にある

十字の交差点を行き交う人々。

名も知らない人が通り過ぎる。

名もない私が通り過ぎる。

けたたましい自由と

うす狂いの白線の上を、

あなたに見つけられたい気持ちで渡る。

あたたかい息を吐く都の影に

あなたは十年の空間になって現れる。

 

いっそ私の魂すら鎖でつなぎ、

とりこにしてくれればよかったものを。

 

 

18才――巡礼を終えた後に立ちよった大きな交差点

 

 

笑い声 標識 冷たい風 ふるえ アスファルト 笑い声 眼鏡の男

 

悲しみ 手さげ袋 ビルジング 肌色のコート 明るい靴

 

警備員 電柱 窓ガラス クラクション 鳥の声 行くあてのない私

 

 晴れた空 灰色の空気 うつむいた目 スーツ 知らない人

 

あきらめ そよ風 白線 犬 サングラス 汚れた上着 笑い声

 

時計 信号機 足音  白衣の女性 植えこみ 吸いがら

 

黄色い手袋 18才 かすれる上着 話し声 看板広告

 

 早足 無情 分からない方角 あなたの手 

 

スピーカー 音楽 ベルト 笑い声 ゆれる髪 3月

 

にぶい太陽 ハンドタオル サイフ  帽子 ぼうっとした目

 

センチメンタル リュックの中の本 憧れ 笑い声 希望

 

 

新月の夜――28才

 

月の出ない夜に

私は一度だけ

神になろうとしました

新月の暗がりで

秘密の言葉を唱え

私は神になろうとしてしまいました

 

結局私は神にはなれず

ぽろぽろこぼれる涙をふきながら

今こうやって人間をしています

 

 

 

 

Author profile
尾々前吾峰

1988年生まれ。大阪府出身。17才の頃に『ゲド戦記』を読み衝撃を受け、以来苦手だった読書を始める。好きな本は『古事記』や『放浪記』など。好きな詩人は北原白秋、北村太郎など。

 

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