photo by 藤田和美

Introduction
詩を詠う、インターネットを舞台に、イメージするのは渋谷交差点。
絶え間なく行き交い続けるわたしとあなたとだれかの、その微かな共有空間はけれども確かな想像の一歩となってゆく。
十の詩人が織り成す巡り合わせのポエトリーリーディング企画。

 

Summer Intersection   フジタカズミ

 

 

なつ

 

夕立のあと

アスファルトはゆだって

しろいスカートの疾走感

ほら

点滅する

あお

波が

すぐそこまで来てる

 

あさ

 

目がさめると雨が

降っていたような気がする

 

誰もいない交差点

誰もいない対岸

信号機も眠るって

日記に書くのはゆううつだ

 

白線の交叉点に座って

見ていたのは交番

誰もいないくせに

ランプの赤はついている

 

思い出したけれど

きょだいヴィジョンは

なぜか

ガラスみたいに

光って

海だか空だかを映していた

 

エメラルド色の群像

 

こめかみをつたう 2017年のゆうだち 波打ちぎわに白線がゆれている 幾億の音がうねる 真夏のゆうれい

ねえ ぼくたちの代弁者になりたいなら 拡声器はすてて 一直線のクラクション あらいざらしたシャツのしろみたいな 世界をよくする方法 伝言ゲームみたいに あたえてくれればいいのに 交差点のむこう サボテンの花の赤くゆるやかに 走りぬけるトラック たえまなくひろがる あのざわめきの名前は

 

うみ

 

つま先にふれた

水滴が

ひかる

きみの

声は

たとえば

トビウオのとうめいなつばさが

はじめて風をうける

その

のびやかなひろがり

 

 

 

 

 

Author profile

岡山県出身、1985年生まれ。
詩と写真。舞台写真を撮りたい。

https://www.behance.net/nightisover