かけあわせの美学〜遊ぶ場所を創り続ける〜
―何十年かクラブに関わられてきてやり始めた時と今で変わったと感じるところはありますか?
K 俺のなかでやっぱクラブシーンってヒップホップから始まってるような気がすんねん。そのヒップホップが変わっていくのと同時にクラブシーンの在り方も変わっていってるっていう感じもすんな。なんかこうZEEBRAくん
とかがやってるギャングスタラップ だけがヒップホップだと思ってるひともいるかもしれんけど、DJKRUSH とかもヒップホップやし、マルコム・マクラーレン もヒップホップやってたし。で、またヨーロッパに伝わったヒップホップも色々とカタチを変えてテクノと一緒になったり…―ドラムン・ベース
になったりK やっぱスゴい可能性を広げたと思うわ。いまや「ある決まりごとの中でないとあかん」っていうのが無くって、ものすごい多様性がある。だからそれは変化といったら、それこそ変化しっぱなしとちゃうかな。でも、今よりももっと自由に色んな表現があってもいい。それは映像もそうやし、照明もそうやし、もっとリンクしてやっていったらいいと思う。
―フライヤーの話もそうでしたけど、「かけあわせ」の美学というか。
K そうそう。そしたらもっと広がりを見せるやん。最近の風潮として一極集中みたいなところがあって、なんか大きいのがすべていいみたいになって。例えばいまEDM
が流行ったら、みんなEDMの方にいって、パーティではDJがスターみたいになって大勢を躍らせる。それがいいんだみたいな。いやそれもええかもしれんけどもっと多様性があって面白いシーンはあるんやでって。既成概念っていうのをまずは白紙にして、ほんで積み上げていくっていうのが大事なことやと思うな。―それを踏まえたこれからの金光さんご自身のヴィジョン。NOONも含めたシーンがどのように発展していってほしいか、あれば聞かせてください。
K 俺個人のヴィジョンで言えば、まずカフェを多店化していこうと思う。ライブもできるカフェをつくったり、カフェだけのカフェをつくったり。それも多様やねんけど、そういうカフェチェーンをつくっていきたいなって思ってる。で、それとは別に、この風営法の改正運動で俺が目指してるのは、自分がするせえへん関係なしに優良資本の企業とかがクラブに参入してきてほしいなって。例えば、俺の友達でもいま大規模ホテルの、大型商業施設のプロジェクトがあって、その中にクラブをつくるかどうかっていう話をしてる。風営法が改正されたら作れる。改正されへんかったらナシ。みたいな。
―クラブ、というか場自体をもっと広げていこうということですか?
K てか、すでに大阪駅とかでは年に何回か大阪駅の何々の広場
みたいなとこでクラブパーティーみたいなんやってたりしてんねん。DJ呼んで。んで、そういうのがもっと一般的になっていってくれてたら、DJとかアーティストとかが活躍の場っていうのん、そういうのが広がるなと思う。で、そうなったら、もっとこう音楽シーンが変わってくるんちゃうんか。それがほんまに根付いてくるやんか。色んなところで大規模なクラブが出来たり、ちっちゃいクラブもいっぱい出来たりして棲み分けもちゃんと出来るようになる。そしたらほんまに新しい音楽に触れる人、若い人がもっともっと増えていって、あの、テレビとかの音楽ランキングも変わってくるやろう。まあ、音楽ランキングのチャートは変わってほしいと思うわ(笑)―なるほど。そのための第一歩というか、具体的なアイデアはありますか?
K うーん、結局は多様性っていう話やねんけど。社交ダンスとかペアダンスの人らおるやんか、あれ今までクラブに入ってなかってん。でもそういうのんもクラブに入れたらええねん。俺その社交ダンスのパーティーとかも行ったことあんねんけど、結構オトナの良い音楽が流れてる。例えばガラージュ
とか、マーヴィン・ゲイ とかかかってんねん。ほんだら、社交ダンス専属のDJがあってもおかしないんちゃうかなとか。んで、昨日イベントやった中でBLITZ AND SQUASH BRASS BAND っていうのがライブやってくれてんけど、それ観て女のお客さんがばんばんサルサ踊ってんねん。で、言われてん。「金光さんあれね、あのバンドそのままで、みんな社交の人踊りますよ」って。そうなんや!って思って。―すばらしい。
K 今社交の人って60歳以上の人ばっかりやねんて。もう高齢化して、若い人が全然入ってけえへん。でもそれはそういうシーンがこれまでなくって、社交ダンスはこんなもん、古臭いもんみたいな感じやってんけど。もともとはものすごいかっこよくてお洒落な感じのもんやから、そういうのも取り入れて、根が増えていったらもっと面白い可能性も出てくるんちゃうか。
―こないだ友達とフラメンコのイベントにいったんですけど、ちゃんとシーンがあるんですね。
K あんねんあんねん。
―分け隔てなく広くシーンとして捉えていけば自然と対外的なイメージも良くなっていく。
K うん、俺クラブはほんまにな可能性いっぱいあると思うねん。それがクラブかどうかはわからんけど、一応、総称としてクラブとして言うけど、そういう可能性がいっぱいあるもんやと思ってる。
―もともとはクラブって自由なところでしたもんね。服を売ったりマガジンとかも置いてあったり。
K まだまだ出来ることはいっぱいあると思う、発想変えたら。それをなんかクラブは終わったとか言うてるアホみたいなんTwitterでいっぱいいてるけど、全然そんなんちゃうよって。そこをただの空間として考えて、その空間をまたデザインすることも出来るし、そこでの遊びをクリエイトすることもいっぱい出来るから。終わったって言う奴はその頭がないだけの話で。
―その人の中の文化が終わっただけだと。
K うん、そいつがよう遊ばんだけの話。実際やっぱりブロックパーティーとかでそういうのって自分らで遊び場をつくったシーンなわけやんか。クラブってのはやっぱりそういうのが根源なんで、自分たちでクリエイトして遊び場をつくっていくっていうのが大事。自由な発想でもっと色々出来る。
―今回、風営法を抜きにしても、NOONといったら大阪の中で、関西でも、先駆者みたいな役割を果たされてきた金光さんが、これからもし同じように活動を始めよう、まあ同業者じゃないですけどそういった方たちにここにはこだわってほしいとか、もし始めるならこういうとこにはアンテナ伸ばしてほしいという点はありますか。
K きちんと分けてほしいかな。まず、営業としてするならやっぱりそこはサービス業であったり、そういうビジネスの部分もしっかり自覚もってやってほしい。あとクリエイティブの方でやるんにしても良い部分を残しながらバランスよくやってほしい。「俺らは文化をつくってるんだ」って言うて、もう採算度外視、それってどうなんかなって。ちゃんとそういうバランスは必要や。あと、過去の先輩たちのことを見ながらそれをちゃんと享受した上で新しいことをしたり、ちゃんとその守るべきところはちゃんと守って。それを知らんかったら、逆に自分たちは新しいつもりでやってても「いやそんなもん過去になんぼでもやってるよ」ってことはあるから。
―過去を学びながら現在を楽しむ、と。あと実際に現場(クラブ)で活動されてるアーティストへメッセージとかありますか?
K メッセージはやっぱりな、基本的に積み重ねることは大事やで。0(ゼロ)から1をつくるってものすごいエネルギー要るやんか、でもそれを一回やったぐらいじゃなかなか認めてもらわれへんというかそれは身にならない。それをやっぱり積み重ねて、これでもかこれでもかってやることが、結局将来に繋がっていくことちゃうかなと思うから、諦めんとやってほしいなと思うわ。
―わかりました。それでは最後に。パラダイス立ち上げ時から今も変わらずに大阪で活動されているのは、やはりこの土地へのこだわりが強いのかなと感じたんですけど。
K あるある。俺はめちゃくちゃある。何回か「東京でやらへん?」って声もかけてもらったけど…。
―やらなかった。
K この2年間で法改正運動で東京行ったり色々話を聴いたけど、土地代が高すぎてクラブで自由な事でけへん。結局は、お金優先なの。それは思うな。で、それともうひとつはやっぱり、大阪の人の感覚。例えば大阪で人に道尋ねたら、オノマトペ
っていう、その筋ガーッとまっすぐ行ってスッコーン左に曲がって、ああいう擬音使う。だけど、感覚というか、こう右脳派の人が結構多いやんか、大阪って。感覚的に。クラブシーンって結構右脳よく使う文化やから。感受性というか。そういう意味で大阪の方がちょっと俺には肌に合ってるし、面白い。もうごちゃごちゃええねんって、大阪の人って。結構その感覚的っていうのが好き。ぐちぐち言うより。そんな感じ。なんか文章でも比較的惹き込まれる文章って、生の文章の方が面白かったりせえへん?難しい言葉ワーッて並べた文章ってあんま惹き込まれへんし、そういう感じかな。
2013.03.01 NOON+CAFEにて