anomura

すてきな声に、会いにいこう
Illustrated by © 2017 タジマ粒子 / TAJIMA PARTICLE
Introduction
“ボディビル”と聞いてどんなイメージが浮かぶだろう? カラダに悪い競技?マッチョで恐い人たち? 兵庫県加古川市。田畑の広がる県道65号線を進むと、奇妙な形の真っ赤な建物が現れる。 マックスジム、個人経営のスポーツジムだ。 出迎えてくれたのは、筋骨隆々とは程遠い印象の、物腰柔らかな男性。ジムでトレーニングの指導に携わる一方、ボディビルの国際審査員としての顔も併せ持つ、木下喜樹さんだ。 丁寧な言葉の端々から溢れるのは、ボディビルに対する深い尊敬の念だった。 彼が語る「全てのスポーツに通ずる魅力」とは。 筋肉美だけではない、ボディビルの世界を覗いてみよう。
Interviewee profile
木下喜樹

兵庫県加古川市生まれ、加古川市育ち。中学・高校時とバスケットボール部でキャプテンを務め、大学・社会人時代に空手やウエイトトレーニングを始める。その後、様々なスポーツを経験した後に、ウエイトトレーニングの指導者となる。現在は、日本ボディビル・フィットネス連盟の審査委員会委員・日本代表選手の海外遠征コーチを兼任。NSCA-PERSONAL TRAINER

畑を使わせてくれ

―ふだんから運動は日常的に?
木下さん(以下、K) はい。ウエイトトレーニングが好きなので、週に3、4回はしないと気がすまない。手間を削って、睡眠時間を削ってという感じですかね。
―学生時からトレーニングはされてきたのでしょうか?
K そうですね。もともとトレーニングが大好きで、様々なスポーツをやってきた中で、ウエイトトレーニングに一番ハマったというか。20歳ごろですかね。
―これだと思った。
K 様々なスポーツの底辺でもあるので。20歳ごろから週に最低3日ぐらいのペースで始めて。24歳ぐらいからは、週に4日や5日。一番やっていた時は週に6日(笑) まあだいたい週に4日から6日のトレーニングを今も続けています。
マックスジム内観

マックスジム内観

―具体的にはどんなスポーツを?
K 中学、高校は部活でバスケットをやっていましたが、並行して柔道や空手もやっていて。他にもゴルフの打ちっぱなしとか、水上バイクとか。テニスや卓球、バドミントンなんかは全部自分用の道具を揃えてやっていましたね。
―球技から格闘技まで。
K でも、このジムをやりだしてからは、ほとんど止めてしまいました。教えてもらっていた方に頭を下げて。「ジムを興すので、しばらく休ませてほしい」と。
―ジムを興された時期は?
K 1997年の4月からなので、自分が28歳の時ですね。今年で19年目、来年で20年目になるので、それまでに床を張り替えたり、機械を買い足せたら良いなと。会員の方の意見を聞きながらですが。
―19年間はずっと、加古川(※1)で?
(※1)加古川市
兵庫県の市。東播磨地方の中核都市。交通の便がよく、神戸市、姫路市のベッドタウンとして発展。マンションが林立し、重化学工業地帯や大型量販店の激戦区となっている南部と、農村風景が残るのどかな雰囲気の北部とで景観が全く異なる。毎年、散歩することの楽しさの発見(人的交流や健康促進)を意図した企画「加古川ツーデーマーチ」が開催され、最大40㎞の道のりを練り歩くために、全国から多数の参加者がやって来る。靴下の生産量は日本一。
K はい。私自身が加古川に生まれてから、一度も外に出てないんですよ。親ともずっと一緒に住んでいますし。ジムの裏が家なんですけど、ある日親に「ジムを興したいから、家の前の畑を使わせてくれ」と。
―頼み込んだ。
K できるだけジムを広くしたいと考えていたので、土地代や設備への投資を考えたら、ここしかなかったですね。
―ひとつひとつの機器も高価そうですが。
K いや、そうでもないです。日本人の体型でも扱える器具で、なおかつ場所を取らず動きの良いものとなると、やはり国産になります。海外の大きくて、立派な機械と比べると、値段も半分程度ですし。まあ、あちこちのメーカーさんに聞いたり、実際に触って選んだりはしましたが。
―なるほど。立ち上げまでの経緯も聴きたいのですが、なぜトレーニングジムを立ち上げようと思ったのでしょう?
K もともと自分もジムに通う側だったんですけど、サポートの体制について、通っていたジムに限界を感じた瞬間があって。経営する方々の本業が忙しかったというのが一番の理由だと思いますが、それなら、自分の思う機械や空間でトレーニングをしたい、トレーニングを教えたいと思うようになって。
―通われていたジムもメインはボディビル(※2)だったのでしょうか?
(※2)ボディビル

ボディビルディングの略。バーベルやダンベル、エキスパンダーなどを使用し、筋肉繊維を発達させていく過程のこと。スポーツにより単に筋肉を発達させるのではなく、科学的なトレーニングにより筋肉を大きく発達させる。歴史は古代ギリシャにまで遡ることができるが、「筋肉を披露する技芸」としてのボディビルが誕生したのは19世紀、「近代ボディビルの父」と評されるユルゲン・サンドウが、運動器具を発明したことに起因する。日本では1938年の若木竹丸による著作『怪力法並に肉体改造体力増進法』がはじまりであり、1950年代後半の第1次ボディビルブームにより、全国に広く浸透するようになった。
K はい。その経営者の方がボディビルのコンテストに出られているような方だったので、どちらかというとボディビル志向の強い個人ジムでしたね。
―木下さんご自身もボディビルを?
K 私自身カラダづくりのボディビルはしてきましたが、ボディビルの大会には出たことが無いんですよ。若いころにステージに立つことを考えた時期もありましたが、結局は機会を逃してしまいました。ただ、ボディビルビルダーではなくてもボディビルへのリスペクトや理解はあったので、頑張っている人をサポートしたい、そんなジムを作りたいという気持ちはありましたね。
あと、ボディビルって狭く見ると、ものすごいマニアックに見えるかもしれませんが、広く見ると「カラダづくり」というか、様々な競技に通じるものだと思います。スポーツの底辺というか。それをもっと多くの人にわかってほしかったというのもジムを興したきっかけのひとつですね。
―総合的なカラダのトレーニングというか。
K そうですね。なので、これは立ち上げ当初からそうですが、ボディビルの方を優遇したり、優先したりっていうのはまったくありません。多くの方がトレーニングを通じて、健康になってくれたり、ウエイトトレーニングの良さをわかってくれたり。一方で、ハードなトレーニングを望む方の要望も叶えてあげたいので、フリーウエイトや重たいダンベルも置いてますね。
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―利用者の層はどんな方が多いのでしょう?
K 比較的、熱心な方が多いと思います。ダイエット、カラダづくりにおいて、フィットネスクラブや市の施設では満足されずに「より良い機材を求めて、重たい重量でハードなトレーニングをしたい」という方々ですね。広島、岡山とかからも「地元では、できないトレーニングをしたい」という方々がビジターでいらっしゃったり。あと、私が競技の審査をやっているということもあって「本格的にポーズを見てほしい」という依頼もありますね。
―マックスジムの機材、木下さんというトレーナーを求めて。
K 「たまにはよその刺激を」という面もあるのかなと。あとは価格設定の問題もあると思います。ホームページにも載せてますけど、ウチは年間で¥48000、月にしたら¥4000です。ふたり同時に入ったら、年間ひとり¥36000なんで、ひと月¥3000ぐらいで通えます。
―カップルでも。
K カップルとか、友達同士とか。「一緒に行こうや」みたいな感じで。ジムとしてたくさんの方にトレーニングをやってもらいたいっていうのと、わたし自身が常時ここにいて完璧な指導ができるという体制でもないので、価格設定は少しでも抑えて還元できたらなと。
―木下さんの他にトレーナーは?
K 妻もダイエット指導や、健康管理のアドバイス、トレーニングの指導をしてくれていますね。
―奥様もボディビルを?
K ボディビルはやっていないです。でも、トレーニング歴は長いので、健康管理とかダイエット目的の方への対応は十分行えます。なので、全般的なトレーニングについては彼女に対応してもらって、本格的なカラダづくりや、スポーツ補強等の指導を求められる方には予約を入れていただいて、私が指導をするという流れですね。
―19年間のこだわりというか、マックスジムが心がけてきたことなどは?
K 自分が持っているすべての知識をしっかりと伝えていきたいですね。食事の指導もトレーニングの方法も。ついつい話が長くなってしまうんですが…
―食事の指導ですか?
K それぞれの状態にもよりますが、例えば私の考え方としては、ダイエットの時に長期間、炭水化物を抜くのは良くないと思います。タンパク質も大事ですけど、油も大事ですし、炭水化物も大事なので、その人の取らないといけない量を見極めながら、その中で最低限のタンパク質をまめに摂ることを勧めたりしていますね。
―偏見かもしれませんが、ボディビルダーの方が大量の生卵や鶏肉のささみを摂取している姿を以前にテレビで見かけたのですが。
K どうなんでしょうね。基本はバランスの良い食事の中で、少し高タンパクを心がけるべきだと思います。というのは、まずジムでは鍛えたい箇所に以前のトレーニングよりも少し大きな負荷を与えて、筋肉に傷を付けます。それを栄養によって以前よりも太く甦らせることを超回復というんですけど、その時に栄養がないと超回復(※3)に至らないんですね。
―超回復に至らないと…
(※3)超回復
適切な栄養補給や休息(目安:48時間~72時間)をとることによって筋力トレーニングで傷ついた筋繊維を回復させることができる。回復後の筋力はトレーニング前よりも増強している。逆に栄養や休息が不十分なまま、トレーニングを再開してしまうと、筋繊維がさらに傷つき、筋肉がついていくことの妨げになる。
気さくな会員さん

気さくな会員さん

K 以前よりも細くなってしまうか、以前が100であれば100に戻って終わってしまうんです。なので、朝から晩までできるだけマメに最低限の炭水化物と脂質と必要なタンパク質を摂っておくというのが栄養摂取の基本になりますね。
筋肉はやっぱり生き物なので、傷ついていれば常に回復したがってるんですけど、栄養がある状態、タンパク質、アミノ酸が血中にあると回復しやすいんですよ。その観点からも本当は1日に3食、4食よりも6食、7食、8食の方が回復しやすいんです。
―それはボディビルダーに限らず。
K はい。なので、それを1日1食とか2食でまかなおうとすると、その時に一気に大量のカロリーを摂取することになるので、余ったところが脂肪になりやすいし、足りないところで回復できない。例えば、1日で3000カロリーの摂取が必要な人が、朝食だけで3000カロリーを摂ってしまうと、余った部分が動いていないところの脂肪になったり、逆に夜寝る前のところで栄養不足になってしまい、タンパク質が足りずに筋肉が超回復しにくいという現象が起こります。
―足りない場合は、寝る前にタンパク質を摂ることも大切だと。
K 寝る前にも摂ったほうがいいですね。まあ、その人が筋肉をつけるのか、ダイエットをするのか、どちらを優先したい時期なのかによって、メニューは変わってくるんですけど。例えば、ダイエットを中心にやっている時期は、寝る前に食べ過ぎるのはあんまりよくないですね。
―なるほど。今のように手を抜かずに、ひとりひとりにしっかりと説明を。
K 他のジムでうまくカラダを作れなかった方、フィットネスクラブでダイエットが成功しなかった方。会員さんの中にはそんな方が多いので、正しいトレーニング、正しいダイエット、正しいジムライフを伝えていきたいという想いはずっとありますね。
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マックスジム
1997年4月、兵庫県加古川市の北部に創立。約50坪のジム内には、健康管理から本格的なトレーニングに対応するため、1㎏のダンベルから始まり、ウエイトプレート、トレーニングマシンがぎっしりと備えられている。最寄り駅はJR加古川線「厄神駅」/神姫バス「薬栗」停留所
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